イラン通貨取引所は7月、ルーブル・リヤルの通貨ペアを上場させた。これに先立ち、イランのアリ・サーレハアーバーディー総裁がモスクワを訪問していた。
この結果、両国はそれぞれ自国の通貨で取引債務を決済できるようになった。初の取引はロシアのウラジーミル・プーチン大統領によるイラン訪問に合わせ、7月19日に300万ルーブル(約650万円)が決済された。
イランメディアは、新たな決済システムによりドルの需要を年間3億ドル(約400億円)減らせると報じている。イランとロシアの2021年の貿易額は40億ドルほどだが、ともに欧米などの制裁で国際的に孤立するなか、両国は短期間でそれを80億ドルに倍増させることを目標に掲げている。
ルーブルとリヤルの取引開始は両国にとって、たんに2国間貿易でドルを使わずにすむだけでなく、国際的な制裁の影響もある程度避けられるというメリットがある。ロシアはウクライナ侵略によって、イランは核開発問題などによってそれぞれ米国やその他の国々から禁輸措置などの制裁を科されている。
イラン当局はロシアとの2国間決済システムについて、将来的にトルコのリラやインドのルピー、アラブ首長国連邦(UAE)のディルハムなども利用できるようにしたい意向だ。
イランのメフディ・サファリ外務次官はさらに、国際銀行間通信協会(SWIFT)に代わる新たな銀行間通信システムをロシアとの間で構築する案も示している。ロシアやイランの多くの銀行は、制裁の一環でSWIFTからも排除されている。
ロシアはすでに2014年のクリミア侵略後に、金融メッセージングシステム(SPFS)と呼ぶ銀行間通信システムを稼働させている。フィナンシャル・タイムズの3月の報道によると、ロシアとアルメニア、ベラルーシ、カザフスタン、キルギスでつくるユーラシア経済連合の銀行間で次第に使われるようになっているという。SPFSにはイランも参加を検討している。
また今年6月には、ロシア政府系のロステック社が、「CELLS」というブロックチェーンプラットフォームを開発した。これもSWIFTの代替システムになる可能性がある。
SWIFTの代替システムとしては、中国も人民元の国際銀行間決済システム(CIPS)を2015年に稼働させている。
ただし、これらのシステムはSWIFTに比べると処理速度が遅い、コストが高い、エラーが起こりやすいといったデメリットも指摘されている。