「使う言葉」が企業文化をつくる まずはリーダーからポジティブに

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組織の価値観は、あなたを含めた1人ひとりの言葉によってつくられています。モチベーションを下げるような悪しき文化を変えるためには、「社会構成主義」「上司の口癖」といったキーワードが重要になる。

こうして社員は、やる気を失っていく リーダーのための「人が自ら動く組織心理」』(松岡保昌著、日本実業出版社)から、メンバーのモチベーションを下げる要因を取り除き、マネージャーが身につけたい心理学に基づいた「使う言葉」に関する改善策を紹介する。

さまざまな事象は人が対話を通して頭の中でつくり上げている


企業や組織の文化を考えるうえで、知っておいて欲しい概念に「社会構成主義(SocialConstructionism)」というものがあります。哲学的な要素も含む概念のため簡略化して解説すると批判も受けそうですが、あえて大胆にわかりやすく説明すると「社会に存在するさまざまな事象は、人が対話を通して、頭の中でつくり上げたものである」という考え方です。

会社や組織においても同じです。組織文化は、その集団の中の人たちが、自分たちが考えたことや感じたことを言葉にし、伝え合うことで、かたちづくられていきます。最初は1人の人物の物の見方や考え方かもしれませんが、それを聞いた人が、それを信じ、また別の人に伝えるのです。そうして、やがて組織の共通の考え方や価値観であるかのように認知されてゆくのです。

この領域では、ピーター・L・バーガー氏やトーマス・ルックマン氏、ケネス・J・ガーゲン氏などが有名です。所属しているコミュニティの価値観や文化は、そこにいる人たちが日常使っている言葉や感情と密接に関係していると考えました。人の集合体である会社や組織も、何を楽しいと感じ、何を悲しいと感じるかは、会社や組織ごとに異なるのです。

人々はお互いの言葉のやりとりである「対話」を通して、あらゆる事象や行為に「意味」をつくっていきます。その「意味」とは、話し手と聞き手の相互作用の結果なのです。まさに、「言葉が世界を創る(Word screate world)」わけです。

このことが理解できると、自分たちが何気なく使っている日常の言葉にも、より関心が向くのではないでしょうか。会社や組織の文化は、自分たちが使っている言葉と密接にリンクしているからです。

ネガティブな言葉やあきらめの言葉も企業文化になる


日頃、自分たちが何気なく使っている言葉を、注意深く丁寧に観察してみてください。

「どうせうちの会社では、新しいことは受け入れられない」「上司にこんなことを言っても、どうせムダ」「頑張ってもバカを見るだけ。適当に力を抜いてやればいいんだよ」

そんなネガティブな言葉やあきらめの言葉が飛び交っているとしたら、それが企業文化になっているということです。

新しいことに取り組むこと、一生懸命やることは、結局報われないという誰かの体験が言葉になり、伝えられ、新入社員や中途入社した社員までもが、うちの会社は、そんな会社なのだと思い込むのです。

このような言葉が飛び交う職場に飛び込んだ社員が、モチベーション高く頑張れるでしょうか。新入社員や中途採用の社員も入社してから数カ月経って、職場に慣れた頃には、適当に力を抜いて仕事をするようになっていてもおかしくないのです。
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編集=安井克至

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