「使う言葉」が企業文化をつくる まずはリーダーからポジティブに

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まずはリーダーから使う言葉を変えよ


組織を良くしたい、モチベーション高く物事に取り組める職場にしたいと思うのであれば、まずこのような日常ささやかれる言葉を真剣に受け止め、その背景を探ってみることが大事です。なぜそのような発言になっているのか、事実なのか、必ずしも事実とまでは言えないのか、一つひとつ確認してゆくのです。

たまたま提案された企画が、その当時の会社の経営方針とは異なるという理由で却下されたのに、その説明が不十分だったために「新しいことは受け入れられない」という発言になっていたかもしれません。

以前の上司の口癖が「うちの会社の体質は古い」で、それを聞いた部下が「新しいことは受け入れられない」と思い込んでいる場合もあるかもしれません。「うちの職場は終わっている」などの発言によって、周囲も「ダメな組織なんだ」という認識を深めて、負のスパイラルに陥るということは、十分に考えられます。

「火のないところに煙は立たぬ」ということわざのとおり、まったく根も葉もないことではないかもしれませんが、勘違いや過去の話、一度だけの事例などが、あたかもすべてのように語られることは珍しいことではないのです。そのような場合には、「社員の認知」を変えることが必要になります。その認知を変える際に、重要な武器になるのが「言葉」なのです。まず、リーダーであるあなたが使っている言葉から変えてください。リーダーがネガティブな言葉を頻繁に使う職場よりも、ポジティブで前向きな言葉を使う職場のほうが、メンバーのモチベーションは高まります。

リーダーの言葉はメンバーの会社に対するイメージを左右する


先述したように組織の文化は、無意識のうちに、そこにいる人たちが使っている言葉でつくられているからです。

1つの事例を紹介します。自社の組織の現状を把握すべく組織診断サーベイ(組織の状態を測定するためのツール)を実施した結果、「関連部署間の連携」や「階層間の意思疎通」という項目の点数が低い職場がありました。

コンサルティングに携わっており、その会社を知っている私の立場からすると、関連部署との連携もとれているほうだし、階層間もわりとフランクに話せる会社だと感じていました。

実際に、全社全体のサーベイの結果では、その項目の点数は低いわけではありません。ですから、なぜその部署では低いのか、探ってみたのです。

「あの部署は、いつも協力しないよね」「部長は、役員が怖くて、何も言えないんだ」

こんなニュアンスの言葉が、「上司の口癖」になっていたのです。当然、メンバーはそれが本当だと信じます。うちの会社は、部署間に壁がある、階層間にも壁があると思い込んでいたのです。

私は上司にそのことを伝え、その口癖を自覚してもらいました。そして、関連部署や上司との出来事は、今後は正確に伝えるように促したのです。

すると、徐々にではありますが、メンバーの認識が変わりはじめました。しだいに他部署と連携する風通しの良い組織、上司を信頼する一体感のある組織に変わっていったのです。

メンバーは、リーダーの「言葉」を通して、自社を知覚し判断しています。リーダーの言葉には、メンバーが会社に抱くイメージを左右する力があることを常に意識して、自分が使う言葉を選びましょう。


こうして社員は、やる気を失っていく リーダーのための「人が自ら動く組織心理」
(松岡保昌著、日本実業出版社)

編集=安井克至

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