中学生が東工大教授に質問 純粋数学はなぜもう「ポケットに入っている」のか?

東京工業大学理学院数学系教授 加藤文元氏


取材班:楕円曲線をもう少し理解できるようになるには、どんな本を読んだらいいですか?

加藤教授:そうですね──。実はどの教科書を読んでも一面的なことしかわからないので、難しいのですが、N.コブリッツという人がちょっといい本を書いています。『楕円曲線と保型形式』(N.コブリッツ著 2012年、丸善出版刊)です。

ぼくが顧問をやっている「数理空間トポス」(中学校・高校で学ぶ範囲を超えた現代数学に興味をもつ中高生が数学について活発に議論するための場。角川ドワンゴ学園が後援している)に来るような中高生でも、このくらいの本を読んでいる人は何人かいます。大好きで大好きで数学のことばかり研究している人たちです。

取材班:天才的な中高生ですね。

加藤教授:「この手の専門書を読めること」自体で彼らが天才であると言えるかどうかはよくわかりませんが、少なくともそういうことに熱中できるという才能には、僕は天才性を感じますね。



加藤文元(かとう・ふみはる)◎1968年、宮城県生まれ。東京工業大学理学院数学系教授。97年、京都大学大学院理学研究科数学数理解析専攻博士後期課程修了。九州大学大学院助手、京都大学大学院准教授などを経て、2016年より現職。著書に『数学する精神 正しさの創造、美しさの発見』『物語 数学の歴史 正しさへの挑戦』(以上中公新書)、『数学の想像力 正しさの深層に何があるのか』(筑摩選書)、『ガロア 天才数学者の生涯』(角川ソフィア文庫)、『宇宙と宇宙をつなぐ数学』(KADOKAWA)など。

文=石井節子 撮影=帆足宗洋(板書以外)

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