2020年6月に356だった導入施設数は、2021年に973、さらに今年6月には2000カ所を超え、新しい市場をリーディングカンパニーとして開拓し続けている。そんな同社の代表取締役社長、上野公嗣(うえのこうじ)氏に起業家として重要な素養、事業成長の秘訣などについてDIMENSIONビジネスプロデューサーの伊藤紀行が聞いた。(全4話中1話)
“おむつの名前書き”という常識を打ち破る
──経営者にとって重要な素養を3つ挙げるとするとなんでしょうか?
最も重要なのが「常識に捉われない」、当たり前のことを当たり前と思わない思考です。2つめが「1人で解決しようとしない」、3つめが「学び続けること」です。
──それらの素養が大切と思われた原体験は。
保育業界では保護者が「おむつに名前を書いて持って行く」「使用済みおむつを持って帰る」というのが常識で、長年脈々と続けられてきたオペレーションシステムです。客観的に見るとおむつに名前を書くのは合理的では無いし、わざわざ1カ所に集まっているゴミを分散させて回収するのも合理的では無い。「この常識はおかしい」と考えたところから現在の「手ぶら登園」の事業は生まれました。
私の場合、他業界から来たというのもあるとは思うのですが、このように「常識に捉われない」着眼点を持って、本来どうあるべきか、現状を正すためにどうすれば良いか、と考えるところにビジネスチャンスが生まれるのだと思います。
1人の力というのは、どんな偉大な人でも大したことはありません。前職でユニ・チャームのマーケティングを担当していた時代も、営業から生産・開発・代理店の方も含めてさまざまな人と1つのプロダクトを共に作っていましたが、起業をしてからはもっと関わるステークホルダーが増えた感覚があります。いろんな人や企業の得意分野や力を使ってあるべき姿を実現する。これが起業家には必要不可欠な意識です。
──「学び続けること」についてはいかがでしょうか。
私は最初に保育所運営事業から創業しました。母親が幼稚園の先生をしていたものの、業界については全くの素人。当然ながら保育所の設立方法もわからなければ、教育に対する理念や知識も全く無い状態からのスタートでした。
保育士たちから保育のあり方を聞いたり、自分自身も保育士資格や幼稚園教諭資格を取ったり。今も大学院の博士課程に通って教育について学んでいますし、MBAに行って経営も学んでいます。学ぶことを通して付き合う人も変わってきますし、知っているからこそ深い知識を得ることができる。ですので、学び続ける力というのは起業してからこそ重要だなと感じています。