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2022.07.30 11:30

裾野が広がるカレーカルチャー 今夏の本命「ダルバート」とは

ライター 田嶋章博


そんなダルバートのメッカと言われているのが新大久保だ。現在、30店舗以上のネパール料理店が存在し、コアなファンがこぞって通い詰めている。
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もともとネパール人が手掛けるお店は、バターチキンやナン、タンドリーチキンといった北インド料理をメインに出すことがほとんどで、ダルバートを出すお店は少なかった。

「ネパール人からすると、ダルバートは日常的に食べる家庭料理なので、そんなものをお店で出しても売れるわけがない、というのが共通認識でした。代金をいただくからには、きちんとしたレストラン料理を出すべきだと」。ところが、新大久保界隈で2010年以降、ダルバートを出す店が一気に増え、近年は他のエリアにもそれが伝播している。

「日本人はむしろ、外国人が祖国で日常的に食べている料理に非日常性を感じる所があるのではないでしょうか。少なくとも僕は、ダルバートにそうした非日常性や旅情を感じたことが、ハマった一因になりました。それに加えてダルバートにはどこか日本料理にも通じる味わいがある。その辺りが、現代の日本人の感覚にフィットしているのだと思います」と田嶋氏は分析する。
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ネパール人経営のお店自体が増えているという要因もある。ネパールは1996年から10年続いた内戦の影響もあって政治・経済が不安定で、国外に出稼ぎに出る人が多い。日本にもたくさんのネパール人が出稼ぎに来ており、2006年に7844人だった在留ネパール人の数は、2020年には9万9582人にまで膨れ上がっている。

「日本で働けば稼げる、あるいは家族も呼べるということで、コックたちは店主や仲介業者に100〜200万円ほどの手数料を払って出稼ぎに来るケースが多いようです」

日本の店はコックを招聘すれば手数料を受け取れるので、移住を促進する。呼ばれたコックたちは後に独立して店をかまえ、新たにコックを招聘する。そうした移住の連鎖が、在留ネパール人の数を増加させ、レストランの増加に繋がっている。

そういったネパール人を取り巻く社会的な状況を、カレー偏愛力によって、少しでもポジティブなものにしようとしたのが、東京ダルバートMAPだ。


東京ダルバートMAPは現在、280店舗を網羅しており、立ち上げ3カ月で24万アクセスを記録している。

最初は特に狙いはなく、田嶋氏自身がダルバートのお店情報をすぐに引き出せるようにしたい、という純粋な動機から始まった。だが、これによって、ネパール人も日本人も喜べるサステナブルな循環を生み出せるのではないかと考えるようになり、情報の精度を上げたり、SNSで積極的に発信するようになったという。

「MAPを見てダルバートスポットに行く人が増えれば、お店が繁盛する。それを見た他のお店もダルバートを出すようになる。それによりダルバートの知名度が上がり、食べに行く人がより増える。さらにお店同士が切磋琢磨することで、より美味しいダルバーが楽しめるようになる。そんな好循環を生み出せれば良いなと」
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文=国府田淳

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