これに対し、オランダのトゥウェンテ大学の最近のプロジェクトが、ヘルスケアがデジタル化の恩恵を真に受けるには、これまでとは異なるアプローチで変革を進める必要があると指摘している。
「デジタル化とは、単に技術を使うだけではありません。何よりも、これまでとは異なる仕事のやり方が必要で、それにはビジョン、ガッツ、リーダーシップが必要です」と研究者は語る。
デジタルケア
デジタルヘルスケアは、パーソナライズ医療の実現、高騰し続ける医療費を抑制できる予防医療による業務負担の軽減などの、無視できない可能性を秘めている。ほとんど常に限界まで多忙を極めている部門では、パンデミックが問題を悪化させる以前から、新しい技術を吸収する能力がしばしば制限要因となっている。
研究者は、研究文献と実践の両方を調査し、事態を改善し、この分野のデジタル化を加速させる方法を見出そうとした。提言の中心にあるのは、デジタル化を推進する上での政府のより積極的な役割であり、変化のプロセスを軌道に乗せるためには長期的な政策が必要であるという。その基本となるのは、ヘルスケア分野における人々の働き方の変化だ。
「変えるべきは、人材の使い方です」と研究者はいう。「医療従事者に加え、技術・医学的なバックグラウンドを持つ専門家やデータアナリストの活用が必要です」
イノベーションの支援
研究者は、重要な出発点は、ヘルスケア機関がデジタル化を何よりもコスト削減の手段としては捉えないようにすることだと主張している。研究者の考察では、デジタル化をコスト削減の文脈で考えてしまうと、どのようにコストを回収できるかが明確にできず、ヘルスケア機関がデジタル化への投資を正当化するのに苦労してしまう。このことは、実験や革新をしようとする意欲を損なわせる。
また、相互運用性の面でもかなりの問題があり、連携しているシステムは少なく、効果的な情報交換もできていないようだ。デジタル化の過程でシステム間の連携に問題が生じた例としては、電子カルテの導入がよく知られている。断片化している医療システムにより、各組織が独自の道を進むことが多く、相互運用性をさらに妨げている。