1. 日本に入国あるいは滞在する外国人(外国籍のみを有する者)の数は、東日本大震災で福島原発事故があった2011年から新型コロナの水際対策で国境が閉じる前の2019年までは、増え続けていた。
例えば2019年の新規入国者数は2011年の5倍以上、また同時期の中長期滞在者もおよそ1.5倍に増えた。しかし、その間の外国人による刑法犯検挙人員数は、ほぼ横ばいか微減している。
2. 来日外国人による刑法犯検挙件数の罪名別構成は、2020年は約6割が窃盗で、この割合は毎年ほとんど変わらない。また同年の、来日外国人被疑事件の検察庁終局処理人員のうち、凶悪犯・粗暴犯に分類される殺人、強盗、強制性交・強制わいせつ、傷害、恐喝が占める割合は、約12%。一方で、日本人も外国人も全て含む検察庁全終局処理人員に占める上記の凶悪犯・粗暴犯の割合は、約16%。
(なお警察庁では通常、殺人、強盗、放火、強姦を凶悪犯に、暴行、傷害、脅迫、恐喝、凶器準備集合を粗暴犯に分類しているが、そのうち放火、暴行、脅迫、凶器準備集合の実数がネット上で入手できるデータ上は公表されていないため本稿でも入れていない)
上記を踏まえると、「外国人が増えると日本国内の治安が悪くなる」「日本人よりも外国人の方が凶悪犯罪を犯しやすい」という言説は、少なくとも警察庁が発表しているデータに基づかないデマである。
当然のことながら、外国人は凶悪犯罪を犯さないと主張しているわけではない。日本人にも外国人にも、悪い人がいれば良い人もいる。ただし、「悪いことが起きるとまず外国人を疑う」一部の人間の姿勢は、人種差別意識や外国人に対する偏見の具現化だ。もっと言えば、かえって日本の政治や社会、日本人自身が内的に抱える真の深刻な問題をごまかして見えなくしてしまう危険がある。
今回の事件は「政治テロ」でも「外国人犯罪」でもない。政治と宗教の癒着、宗教と献金、「カルト」、社会に居場所を失ったいわゆる「ロスジェネ」、血税で元首相の警護・警備をどの程度行うのが適切か、などの問題を問うものではなかろうか。
要するに、日本の政治と日本社会自身の内在的問題である。