がんサバイバーは心血管疾患を発症しやすいことが研究から判明

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がん既往歴のある成人は、がん既往歴のない人に比べ、心疾患や心血管疾患を発症するリスクが高いことが、最新研究で明らかになった。

米メリーランド州ボルチモアにあるジョンズ・ホプキンス大学の研究者が中心となって行われたこの研究は、米国心臓病学会が発行する学術誌で発表された。そのなかで、がんを克服したがんサバイバーが心血管疾患を発症する確率は、がん既往歴のない人よりも42%高いことが示された。

今回の論文の筆頭著者ロバータ・フロリド(Roberta Florido)は、「心血管疾患は、がんサバイバーの主要な死因のひとつだ。しかし、そのリスクはたいてい過小評価されている」と述べる。フロリドは保健学修士をもつ医師であり、ジョンズ・ホプキンス大学医学部のアシスタントプロフェッサーで、腫瘍循環器学科長も務めている。

この研究の対象者は1万2414人で、そのうち3250人ががんサバイバーだった。研究で明らかになったのは、がんサバイバーは、がん既往歴がない人と比べて、心不全を発症する確率が52%、脳卒中を発症する確率が22%高かったことだ。しかし、冠動脈性疾患については、がんサバイバーとがん既往歴のない人の発症リスクに違いはみられなかった。

「がん」は、およそ200種にもおよぶ悪性疾患の総称だ。研究者は今回の研究で、特定タイプのがんを克服した人は、他のタイプのがんを発症した人よりも心血管疾患の発症リスクが高くなることを突き止めた。さまざまな種類のがんについて検証したところ、乳がん、肺がん、大腸がん、血液がんのサバイバーのほうが、心血管疾患の発症リスクが高いことがわかったのだ。しかし、前立腺がんのサバイバーについては、心血管疾患の発症リスクが高くなることはなかった。

今回の研究論文の上級著者エリザベス・セルヴィン(Elizabeth Selvin)は、「がん治療が大幅に進歩したことで、がん患者の寿命はどんどん延びている。つまり、今後は他の慢性疾患に目を向ける必要があるということだ。がんサバイバーは、特に心疾患に注意しなくてはならない」と述べる。セルヴィンは公衆衛生学修士をもつ医学博士で、ジョンズ・ホプキンス大学ブルームバーグ公衆衛生学大学院の疫学教授でもある。

今回の研究はそもそも、こうしたリスク上昇を招く原因を突き止めるために設計されたものではなかったが、考えられる原因はいくつかある。そのひとつが、特定のがん治療に用いられる特別な治療法だ。たとえば、アントラサイクリン系抗がん剤は、心血管疾患の発症リスクを上昇させることでよく知られている。胸部への放射線治療も、心血管疾患の発症リスク上昇を招くとされており、治療から何年も経過してから発症するケースがある。

「がんサバイバーの心血管疾患発症リスクが上昇するのはなぜなのか。ある種のがん治療がもたらす心臓への悪影響で、心血管疾患の発症リスク上昇が部分的に説明できるのかどうか。そうしたことの解明を進めるためには、さらなる研究が必要だ」と、筆頭著者のフロリドは述べている。「今回の研究をきっかけに、がんサバイバーのあいだで心疾患についての認識が向上し、医療従事者が、予防の重要性を積極的に呼びかけていくようになることを願っている」

翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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