最近の飛行機での移動において、私たちは呼気中CO2濃度を機内における新型コロナ感染リスクの代替指標として用いることを検討してきた。周囲のCO2レベルが高いほど、近くの人々が吐き出す呼気の影響が大きくなり、周囲における新型コロナウイルスのリスクも大きくなるというのが基本的な考えだ。
この考えは、飛行機内だけでなく私たちの日常生活にも拡張できる。パンデミック開始当初の数カ月間、私たちは高いCO2濃度環境にいる機会が少なく、感染リスクも小さかった。最近になって、オフィスでの仕事やレストランでの食事、休暇中の旅行など、多くの個人あるいは人が集まる場面の主催者の行動が日常に戻り、今後の新型コロナウイルス感染リスクの高まりを感じさせている。
パンデミックの1年目、多くの人々が、新型コロナウイルスは飛沫核、すなわちエアロゾル(呼気)中のウイルス粒子経由では感染しないことを示唆していた。彼らの考えは、ウイルス伝染を大きな飛沫、すなわちくしゃみや咳の排出物や、ドアの取っ手やテーブルなど、表面にウイルスが付着した媒介物を経由した伝染に限定していた。こうした見解がマスク着用に対する懐疑心を生み、多くの国々がマスク着用の義務化を実施する中、米国が実施に踏み切らなかった原因となった。
この理論は最終的に一掃された。理由は実生活環境における実験結果による。たとえばジウ・ペンとホセ・L・ヒメネスの研究は、密閉した室内環境でCO2濃度を分析し、新型コロナウイルス感染リスクとCO2濃度の関係を定量化した。予想通り、CO2濃度の高い密閉環境に感染者がいると、伝染する可能性がはるかに大きいことが示された。