ビジネス

2022.06.23

50億円調達のjinjer、目指すは国内No.1のSaaSプレイヤー

投資家:持田昌幸(左)タイボーン・キャピタル・マネジメント、 起業家:加藤 賢(右)


加藤:SaaSはプレイヤーが増えてレッドオーシャン化が進んでいるという人もいますが、僕がこれまで戦っていた人材サービス業界は成熟市場で、無形サービスがゆえに参入障壁が低く、数万もの事業者がひしめき合う、まさしくレッドオーシャンでした。そこと比べるとSaaSは市場全体が成長期にあり、広げていける余地が十分にある。

投資検討にあたって、厳しくデューデリジェンスしていただいたことは僕にとっても心強い。年明けから市場環境が大きく変わってしまい、バリュエーションの条件を変更したり、方針が変わって投資を中止したりするVCさんもありましたが、持田さんはできる限り最初に話した前提で進めてくれてありがたかった。

持田:僕が面白いなと思ったのは、バリュエーションの話をしたときに、加藤さんのほうから「いまの市場環境で、この金額で大丈夫ですか?」と聞いていただいたこと。だって、こちらは安ければ安いほうが当然いいわけですから。

だけど、加藤さんは、いまバリュエーションを高くするメリットはない、つまりここから数字を積み重ねていくだけで、逆に高いバリュエーションでやったら次のラウンドで苦しくなるかもしれないと考えていた。この長期視点は我々の姿勢と合うと思いました。

加藤:僕個人でいうと、前職に残るよりも大きな成長が生み出せないのであれば、今回の選択肢を取る必要はなかったわけですし、とことん勝負しようというのが前提にある。中長期でどう成長させるのか本気で考えているし、最終的にはARRなどの数値面を含めて日本でNo.1のSaaSプレイヤーになりたい。その可能性は十分にあると思っています。

SaaS領域でプロダクトとセールスの両方が強い会社はいまのところほとんどない。広告をたくさん出して、インサイドセールスだけで取れる市場は限られている。直接訪問して足しげく通うなど、泥くさくマーケットを掘り返していきます。

持田:応援しています。僕にできることはガバナンス面のサポート。日本のスタートアップは予算を外して平気でいる緊張感のない経営者が少なくありませんが、上場会社は一歩踏み間違えたら株価が翌日に大きく下がるような世界で戦っています。クロスオーバー投資家の強みを生かして体制整備を支えていきます。


もちだ・まさゆき◎タイボーン・キャピタル・マネジメント日本株投資責任者。慶應義塾大学経済学部卒。米国ペンシルベニア大学ウォートン校MBA修了。ニューヨークの米系投資銀行を経て2015年より現職。代表的な投資先はPaidyなど。

かとう・けん◎jinjer代表取締役CEO。1976年生まれ。大学卒業後の2000年、人材サービスのネオキャリアを共同創業。専務取締役副社長として同社の成長をけん引したのち、21年10月、同社からのスピンアウトでjinjerを設立した。

文=眞鍋 武 写真=平岩 亨

この記事は 「Forbes JAPAN No.093 2022年月5号(2022/3/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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