ビジネス

2022.06.23

50億円調達のjinjer、目指すは国内No.1のSaaSプレイヤー

投資家:持田昌幸(左)タイボーン・キャピタル・マネジメント、 起業家:加藤 賢(右)

加藤賢は2021年10月、専務取締役副社長COOを務めていた人材サービスのネオキャリアからのスピンアウトでjinjerを設立した。

同社はSaaSプロダクト「ジンジャーシリーズ」を展開。人事労務や勤怠管理、給与計算などのHR関連を中心に、バックオフィス業務を効率化するプロダクトを総合的に提供し、単一のデータベース上に情報を集約できることが特徴。約300人の従業員を抱え、サービスの利用登録社数は累計1万5000社を超える。

2022年3月、jinjerは総額約50億円の資金調達を実施。このラウンドでリード投資を行ったのが、香港を本拠地とするクロスオーバー投資家のタイボーン・キャピタル・マネジメントだ。同社日本株投資責任者の持田昌幸が投資した理由とは。


持田:最初は信頼している経営者からの紹介で加藤さんにお会いしたのですが、スピンアウトでこの規模の会社がインディペンデントになることはストーリーとして面白く、すごくポジティブな印象でした。

加藤:コロナ禍のなかで、前職では人材サービスに原点回帰しようという動きがあり、新規事業であったSaaS事業について深く議論したうえで今回の決断に至りました。16年1月にサービス開始したジンジャーシリーズはようやく芽が出てきた段階。しっかりと資金調達を行って成長スピードを加速させて、大きく花咲かせていこうという結論です。

持田:jinjerのサービス領域であるHRSaaSはTAM(獲得可能な最大市場規模)が大きく、1兆円くらいの規模がある。我々は米国のワークデイなど上場株に投資しているのでなじみのあるセクターですが、jinjerはすでに勤怠管理で高いシェアを占めているなど、PMF(プロダクトマーケットフィット)がうまくできていた。

日本の上場SaaS株にも投資をしていますが、各分野の最適な製品を組み合わせて使うベスト・オブ・ブリード型のプロダクトを手がける会社が多い一方で、ユーザーのなかにはAPI連携よりもひとつのIDですべてのデータを管理したいという声が少なくない。その意味でも可能性を感じました。

jinjerはネオキャリアから優秀な人材が一緒に来ていて、組織もしっかりしている。実際、今回の投資にあたって30社ほどのユーザーインタビューをしましたが、営業のクオリティが高いという声が多かった。
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文=眞鍋 武 写真=平岩 亨

この記事は 「Forbes JAPAN No.093 2022年月5号(2022/3/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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