「最新のiPhoneは持っていない」 アップルの元開発者が語るサステナビリティ

VivaTechに登壇したトニー・ファデル


「毎年新しいiPhoneを消費する必要はない。私たちは地球のために賢い選択をせねばならない」と言い切り、大量生産・大量消費社会に対し疑問を呈した。さらに、「出荷から梱包、収益源まで、ビジネスのあり方に配慮する必要がある」と強調。ビジネスモデル自体を、当初から環境に配慮したものにすべきとの考えを示した。

ファデルが今年5月に出版した新著『Build: An Unorthodox Guide to Making Things Worth Making』には、その本に関する「サステナビリティ情報」が掲載されている。まるで食品の栄養成分表示のようなデザインで、本の原材料や印刷の詳細、役目を終えた後どうなるのかなどがわかるようになっている。


本に掲載された「サステナビリティ情報」(カンファレンスのスライドより)

スタートアップに必要なのは「リスクを取ること」


ファデルは、スタートアップが成功するための必要な要素にも言及し、「リスクを取ること」とひと言。スティーブ・ジョブズは多くの失敗を経験してきた一方で、彼が決断した30〜40%の事項では、信じられないほどの成功を収めてきた、というエピソードを紹介した。

また、スタートアップは「常に腹の底からワクワクするような気持ちで突き進まなければならない」と助言。新しいことをするときこそ「自分の直感を信じなければならない」と身振りを交え語り、データではなく直感を信じることの大切さを訴えた。

テック業界と小売業界が注目する「持続可能性」


筆者は、ファデルのようなビジネス界の最前線にいる人物が、地球環境に配慮し、環境への影響を極限まで減らそうとしている事実に胸を打たれた。

また、新著での取り組みのように、ビジネスモデルの検討段階で地球環境のことを考える視点は新鮮だった。こうした働きかけは、経済界には構造的に「サステナブルでない事業」が多数存在するという、不都合な事実を浮かび上がらせるものでもある。

サステナビリティ情報の開示については、筆者が前週に参加した小売業のカンファレンス「Shoptalk Europe」でも事例が紹介されており、これからより一層広がっていくことが予想される。

テック業界と小売業界でトレンドが同じである点は、真剣に受け止めなければならない。環境破壊が待ったなしの状況まで来ている。そのことを意識させられるセッションであった。

文・写真=田中森士

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