ロシアの黒海封鎖、イエメンの1300万人を「飢餓」の窮地に

Photo by Mohammed Hamoud/Getty Images

およそ7年にわたって続いたイエメンの内戦は、数十万人の命を奪い、多くの人々を食料危機に陥れた。そして現在、同国をはじめ各国の飢えに苦しむ人々が、ロシアの一方的なウクライナへの侵攻により、さらに困難な状況に追い込まれている。

欧州の穀倉地帯として知られるウクライナからの食糧の輸出は、ロシアが黒海を封鎖していることによって停滞。世界的な供給量の減少は、穀物や食用油の価格を押し上げている。そして、食料品のおよそ9割を輸入に頼るイエメンでは、栄養失調で死亡する人が増加している。

1938年創業のイエメンのHSAグループの創業者の孫、国内事業を担当するモハメド・ナビル・ハーイル・サイードは、「とても脆弱なイエメンのような国にとって、これほどの規模の危機に単独で立ち向かうことは非常に困難だ」と語る。

内戦はイエメンのインフラを破壊し、失業率を高め、供給を途絶させ、そして死者を増やしてきた。HSAの競合他社の大半は、もう何年も前にイエメンでの事業から撤退した。

そのなかでも、兄弟4人で創業、小さな小売店からビジネスを拡大してきたHSAは事業を継続。インドやルーマニア、フランスなどからの輸入によって穀類を確保しようと奔走してきた。

首都サヌアにいるハーイル・サイードはフォーブスの取材に対し、状況は「悲惨だ」として、次のように述べている。

「この問題が放置されれば、イエメンのような国は重大な影響を受けることになる。飢餓は拡大し続け、隣国をはじめ他国に移住する人が増加するだろう。私たちは協力して、問題を解決しなければならない」

状況は世界「最悪」


ロシアが侵攻を開始した今年2月下旬以前、ウクライナから輸出される穀物の98%は、黒海経由で輸出されていた。だが、その輸送ルートは現在、ロシア軍によって封鎖されている。世界で最も食料不足に苦しむ国々、特にアフリカの各国は、ロシアがウクライナから「盗んだ」穀物でも、輸入する考えを明らかにしている。
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編集=木内涼子

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