ブルームバーグの調査によると、ウェルズ・ファーゴでは黒人が申請した住宅ローン借り換えの承認率は47%にとどまり、主要金融機関では最低だ。ほかの金融機関による黒人の申請の承認率は平均71%となっており、ウェルズ・ファーゴの低さは際立つ。
一方で、同行では白人による申請の承認率は72%に達している。アジア系は67%。ヒスパニック系も53%まで下がるが、それでも黒人よりは高い。
家を持つことは米国でいまも富を築くための重要な手段のひとつだが、黒人の住宅所有率は全米で41%にとどまるのが実情だ。
アフリカ系米国人の保有資産額の中央値は2053年にはゼロになるとの予測もある。ウェルズ・ファーゴによる厳しいローン審査も、一部の黒人の家計悪化に追い打ちをかけるだろう。
カルチャーバンクス(編集注、筆者の経営するメディア企業)は最近、26〜39歳の黒人の間で、持ち家を通じたアメリカンドリームの追求は衰えておらず、黒人全体の住宅所有率を押し上げていると伝えている。米国勢調査局のデータによると、この世代によって黒人全体の住宅所有率は2020年1〜3月期に2ポイント超上がった。
とはいえ、2020年に住宅を購入したミレニアル世代の黒人が、米国の黒人の大部分を代表しているわけではない点には注意する必要がある。実際、ほとんどの黒人は新型コロナのパンデミック(世界的大流行)の間に経済状況が悪化した。
エコノミストの間では、ミレニアル世代の黒人は住宅ローンの審査などでの構造的不平等に加え、ほかの人種に比べ多い学生ローン残高も考え合わせると、家を買うのすら難しくなっているのではないかという見方もある。全米不動産業者協会のまとめによると、全米の住宅購入者に占める黒人の割合は5%ほどとなっている。
米国では1968年まで、金融機関は住宅購入者の人種や居住区域を理由に住宅ローンの提供を拒否することが認められていた。こうした「レッドライニング(赤線引き)」と呼ばれる慣行は、貧困の集中や住宅所有の制限など黒人に対して長期的な影響をもたらしており、人種間の貧富の格差を広げる一因になっている。
端的に言えば、レッドライニングや政府の住宅政策は、いまもなお黒人による富の蓄積を妨げているということだ。