原油相場の趨勢を大きく左右する「ワッハーブ王国」次の一手

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原油の供給不足がどこまで解消できるかは、サウジアラビアの動向いかんだ。ロシアがさらなる減産を余儀なくされた場合、肩代わりで追加増産に応じる余力が最も大きいのはサウジアラビアだ。日量180万バレル余りとOPEC加盟国の増産余力合計の3分の1強を占め、他の加盟国への影響力も大きい。バイデン米大統領の7月サウジアラビア訪問の可能性も取りざたされており、両国の交渉の行方が原油相場の今後の最大の焦点になりそうだ。

「サウジアラビアは米ロ両国を満足させることに成功した。これは石油市場におけるワッハーブ王国(サウジアラビア)の力を改めて示そうとする挑戦である」と前出の「レ・ゼコー」紙電子版は伝えているが、米国への過度な接近は、ロシアを追い込みかねない。反面、原油高を放置すれば、国際社会からの風当たりが強まるおそれもある。カジ取りを誤るようだと、サウジアラビアの「挑戦」はたんなる「無謀な試み」と化す。

米国の利上げにも大きな影響が


バイデン政権にとってもサウジアラビアとの話し合いは11月に控える中間選挙前に勝利するためには大きなヤマ場といえそう。5月下旬からスタートしたドライブシーズンでのガソリン価格のさらなる高騰はなんとしても抑えたいところだからだ。

原油価格の趨勢は米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策運営も左右しかねない。FRBのパウエル議長は5月の連邦公開市場委員会(FOMC)で0.5%の大幅利上げを実施したのに続き、さらに6月、7月と3カ月連続で0.5%の利上げを行う考えを示唆。市場の関心は9月のFOMCの会合でも0.5%の利上げに踏み切るかどうかに集まっている。

それだけに、原油高に歯止めがかからなければ、9月の0.5%利上げのシナリオは現実味を増して、金融市場に波乱をもたらすリスクもある。

連載:足で稼ぐ大学教員が読む経済
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文=松崎泰弘

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