EUのロシア産石油の禁輸措置にハンガリーが反対する理由

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欧州連合(EU)が進める、ロシア産原油の全面禁輸を含む対ロ制裁案の協議は難航している。複数のメディアが5月30日に報じたところによると、EUはウクライナに侵攻したロシアを罰する一方で、経済的打撃を抑えようとしており、石油の禁輸措置からハンガリーなどの国を事実上除外するための施策を検討している。

フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長は30日にブリュッセルで開かれたEU首脳会議で、ロシアからの原油の禁輸について、今回の会議で各国が合意する見通しは低く、合意はまだ先になる可能性があると述べたと報じられている。

2日間の会議に先立ち、EU諸国の特使らは、輸入禁止の対象を船で輸入される原油に限定し、パイプラインでの輸入は当面の間許可するという妥協案について議論したという。

この妥協案は、原油の大半をロシアに依存しているハンガリーなどの内陸のヨーロッパ諸国にとっては救いとなる。ハンガリーは、EU諸国のどの国のリーダーよりも親ロシア的なポピュリスト政治家のオルバン首相が率いている。

しかし、ブリュッセルのサミットに到着したオルバン大統領は記者団に、EUとまだ協定を結んでいないことを示唆した。その理由の一つは、仮にパイプラインによる輸入が何らかの理由で中断された場合に備え、他の手段を確保しておきたいからだ。

ロシアの原油のほとんどは船でEUに輸送されるため、海上輸入にのみ適用される禁輸措置であっても、輸入のほとんどが絶たれることになる。しかし、ハンガリー、スロバキア、チェコの内陸部の3カ国は、ドルジバ・パイプラインによる陸上輸送に依存している。

EU最大の経済大国であるドイツは、今年中にロシアからの原油の輸入を断つことを目指しており、ブルームバーグは、ドイツの当局は他のEU諸国が追随するかどうかにかかわらず、この動きを実行する計画だと報じている。

ロシアのウクライナ侵攻が始まって以来、ドイツはロシアのパイプラインを経由する原油と天然ガスの輸入を急速に減らしている。

ロシアのウクライナ侵攻の開始以来、EUに加盟する27カ国はロシアに制裁を加えている。フォン・デア・ライエン委員長は4日に、ロシア産原油を6か月以内、石油精製品を年末までに全面禁輸とする方針を打ち出した。

原油の禁輸はロシアから重要な収入源を奪うことになるが、ロシアの石油に依存してきた多くの国は、すみやかに代替エネルギー源を探す必要がある。

追記:EUは30日の首脳会議で、パイプラインによる輸入は当面除外し、船で輸送される石油に限定して、ロシア産石油の輸入を禁止することで合意した。

編集=上田裕資

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