ヴェネチア・ビエンナーレのNFT事情と「ウクライナ広場」に積まれていたもの

クリエイティブコンサルティング会社 Wakapedia創業者 サラワカ氏(photo by Gabriele Basilico)


しかし、行ってみると、前述した主会場、ジャルディーニとアルセナーレにはNFTに関する展示はほとんど見かけませんでした。今年初めて、「Palazzo Ca’ Bernardo」という建物に出展された「カメルーン・パビリオン」の一部でやっと「クリプトアート展」が開催されていました。

私は、ヨーロッパのアート界は、まだNFTについて「新しすぎるアート」と考えている印象を受けました。世界最古のアート祭典であるため、他の現代アートと比べて真新しいNFTに、価値を与えたくなかったように感じました。

イタリア人は保守的な傾向もあるので、注目されて1年も経っていないNFTを、まだアートとして認めたくないと考えているのではないでしょうか。

NFTは必ず浸透する? 時代の変わり目に起こること


NFTは「あなただけのアセット」であることも特徴です。

身近なところで例を1つ挙げるとするなら、簡易的なアニメーションをチャットで絵文字のかわりに使えるGIF(Graphics Interchange Format)は、誰もが使える「フリー素材」です。それに比して、NFTは誰でもが使えるものではない、所有者が明確です。今後NFTは購入したアートを自らだけが操作し使えるなど、使い方の発達によっては「NFTを所有すること」の価値がさらに高まりそうです。

そもそもNFTは、世界最古のオークション会社「クリスティーズ」で、Beeple(本名:マイク・ヴィンケルマン)氏のデジタルアート作品である「Everydays - The First 5000 Days」が、約6935万ドル(約75億円)で落札されたことがきっかけに一気に注目を浴びました。

当時、NFTについて知っている人がほとんどいない中、誰もイメージできないデジタルアートに高額な価値がついたので、世の中に与えた衝撃も大きかったです。

今年のビエンナーレはNFTを認めたくない姿勢とも感じられますが、私はNFTは今後より身近な存在になると考えます。世界中から集まるアートキュレーターやギャラリストと話していると、NFTは常に話題にあがります。

考えてみれば、現在流行している現代アートも、はじめはみんな「Ugly(醜い)」と捉えられ、世の中になかなか受け入れられませんでした。

NFTも同じです。「新しすぎる」という理由でアート業界に浸透しきっていませんが、時間が経つと受け入れられてくると思います。
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文=Ryoseon Bae 編集=石井節子

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