ヴェネチア・ビエンナーレのNFT事情と「ウクライナ広場」に積まれていたもの

クリエイティブコンサルティング会社 Wakapedia創業者 サラワカ氏(photo by Gabriele Basilico)

「鉄腕アトム」のモザイクアートNFTが約5600万円で落札されたり、ナイキがNFTスニーカー企業を買収したりなど、ここ1年NFTに関するニュースが絶えない。世間の盛り上がりを見て、「アートはもはや、ビジネスパーソンの教養の1つとして無視できなくなっている」という空気感を筆者は感じずにはいられない。

NFTとは、Non-Fungible Tokenの略であり日本語で「非代替性トークン」と翻訳されるデジタル資産だ。ブロックチェーン技術を利用することで、全ての作品を非代替性であると証明することができる。所有者を明確にし、希少性を担保できるのがNFTのポイントだ。

では、アートのハブであるヨーロッパで、NFTはどれくらい盛り上がっているのだろうか。今回はミラノで生まれ育ち、現在ヨーロッパと日本を拠点にアートディレクターとして活動する異文化交流の促進を目的としたトータルサイトWakapediaの創業者、サラワカ氏に取材をした。

サラワカ氏は今年4月、世界最大級のアートの祭典「第59回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展」に参加した。今年、ロシア人アーティストの辞退によってロシア館は閉鎖され、ウクライナ支援のための展示が急遽開かれている。

そこで、イタリアのアート界のNFTに対する意外な反応を目にしたという。世界最大であり最古のアートの万博、ヴェネチア・ビエンナーレを通して見えてきたNFTの現在地とは。


クリスチャン・ルブタンなどのブランドアンバサダーも


サラワカ氏は、クリエイティブコンサルティング会社Wakapediaのファウンダー兼クリエイティブディレクターだ。日本人オペラ歌手のもと、ミラノで生まれ育った。ミラノにある大学のアートマネジメント学部を卒業後、フランスでソルボンヌ大学の修士課程で比較文化を学び、2013年に「Wakapedia.it」を立ち上げる。

ミラノ・東京を拠点に世界中を飛び回りながら、クリエイティブ・コンサルタントとして、国際的な大手企業や在日イタリア大使館などの公的機関に向け、それぞれの市場に合わせた高品質なオリジナルコンテンツを提供している。

また、クリスチャン・ルブタン、ジョルジオ・アルマーニ、任天堂イタリア、アサヒビールなど様々な分野のブランドアンバサダーや、ブルータス、ロフィシャル・イタリア、トイレットペーパーマガジンなど、各媒体とのプロジェクトにおけるアートディレクションや記事の執筆を担当してきた。

さらに、国際色豊かなチームメンバー(宮野陽佳、ジュリア・ビゾン、フェデリカ・フォルテ、カミーユ・ブルネ)で成るWakapediaのウェブサイトでは、世界的な著名人のユーモア満載のインタビューを日、英、仏、伊の4ヶ国語で発信している。現在、ラグジュアリーブランドとNFTを繋ぐプラットフォームMintougeと、NFT作品を製作中。

アート業界で活動の幅を広げるサラワカ氏は、次のように話してくれた。
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文=Ryoseon Bae 編集=石井節子

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