米国での存在感や認知度も重視した結果、中国のインターネット大手のTencentや、多国籍携帯電話事業会社のVodafoneは選考から漏れた。上位100社の中には男性用カミソリで知られるジレット社や、IBMのような企業も含まれている。
フォーブスでは、これらのブランドの過去3年間の収益額を調べ、業種ごとに異なるブランド貢献度を当てはめ、ブランド力によってもたらされた収益額を推計した。例えばラグジュアリー商品や飲料はブランドの貢献度が高く、航空会社や石油会社ではブランドの貢献度は低い。そして、この金額に過去3年間の株価収益率を当てはめ、最終的なブランド価値を算出した。
上位100ブランドの国籍は15ヶ国、業種は20業種に渡る。国籍ではアメリカ企業が半分強を占め、ドイツ(9ブランド)、日本(7ブランド)、フランス(7ブランド)が続いている。業種ではテック系が15ブランドと最も多く、トップ20の半分を占める。また、自動車と消費財がそれぞれ13ブランド入っている。自動車ブランドの最上位は8位のトヨタで、ブランド価値は378億ドルとなっている。
首位は5年連続でアップル。Facebookで前年比で54%もブランド価値を伸ばし、初のトップ10入りを果たした。
下記にその詳細をお伝えする。
1位:Apple
ブランド価値:1,453億ドル/前年比:17%増
Appleには世界中のどのブランドよりも2倍以上の価値がある。Appleの2014年の第四四半期のスマートフォン販売台数は7,480万台で、前年から49%増加し、2011年以来初めてSamsungを抜いた。Appleの第四四半期の利益は180億ドルだった。
2位:Microsoft
ブランド価値:693億ドル/前年比:10%増
年商940億ドルのMicrosoftは、ここ数年はメディアやユーザーから叩かれ続けていたが、新CEOのSatya Nadellaの元で再び「クール」なイメージを取り戻した。今年の夏にリリースされるWindows 10は、Windows OSの最後のメジャーアップグレードになる見込み。Microsoftは、Windows 10のユーザーを、2018年までに10億人獲得したいとしている。
3位:Google
ブランド価値:656億ドル/前年比:16%増
米国内における検索エンジンのシェアは64.4%と、依然として独占的な地位を保っているが、調査会社ComScoreによると、前年から3.1ポイント減少しているということだ。その圧倒的な地位ゆえに、GoogleはEUの競争監視当局から優越的地位を乱用したとして、独占禁止法違反で提訴された。Googleに課せられる制裁金は60億ドルにも上るとされているが、第一四半期終了時点で660億ドルの手元資金を抱えており、支払には問題なく応じられるだろう。
4位:Coca-Cola
ブランド価値:560億ドル/前年比:0%
旗艦ブランドCoca-Colaのアメリカ国内での販売数量は、2014年に0.1%増えた。僅かな成長でも、母国で成長率がプラスとなったのは2000年以来初めてのことで、Coca-Colaにとって意義は大きいと業界誌「Beverage Digest」は書いている。悪材料としては、昨年Diet Cokeの売上は6.6%減少、純利益は17%減少した。Warren Buffettが率いる Berkshire HathawayがCoca-Cola株の9.3%を保有している。
5位:IBM
ブランド価値:498億ドル/前年比:4%増
IBMの売上高は12四半期連続減収となった。IBMは不採算事業の整理を進め、ハードウェア事業からクラウドサービスのような収益率の高い事業への移行を図っている。2015年第一四半期のクラウドサービスの売上は、前年から60%増えた。IBMは、収益の半分以上をアメリカ国外で稼いでいる。
6位:McDonalds
ブランド価値:395億ドル/前年比:-1%
世界100ヶ国以上で事業展開するMcDonaldsは、アメリカ国内においては消費者の食習慣の変化に直面し、アジアにおいては、食の安全問題に直面している。売上は2015年第一四半期で前年から11%減少した。McDonaldsは今年、主にアメリカ、中国、日本の不採算店舗を約700店閉鎖する予定だ。
7位:Samsung
ブランド価値:379億ドル/前年比:8%増
昨年は、AppleのiPhone 6や、中国のXiaomiなどの格安スマートフォンの台頭により、Samsungの急成長に陰りが見えた。Samsungは、新モデルS6の投入により、悪い流れを断ち切ろうとしている。同社はブランドイメージ向上のため、昨年は広告宣伝費に38億ドルを費やした。この金額は、Appleの広告宣伝費の3倍に上る。
8位:Toyota
ブランド価値:378億ドル/前年比:21%増
Toyotaは、世界で最も儲かっている自動車ブランドだ。リコール問題から立ち直り、昨年は198億ドルの純利益を計上した。自動車販売台数において、Toyotaは過去7年間で6回世界一位を獲得し、2014年には史上最高となる1,023万台を販売した。
9位:General Electric
ブランド価値:375億ドル/前年比:1%増
ダウ平均株価の算出が始まって以来の構成銘柄であるGeneral Electricは、4月に金融事業の大半を切り離し、製造業に集中する計画を発表した。General Electricは、配当や、500億ドルの自社株買い、事業売却などを通じて、900億ドルの株主還元を実施する予定だ。
10位:Facebook
ブランド価値:365億ドル/前年比:54%増
ランキングの上位100ブランドの中で、ブランド価値が最も増えたのはFacebookで、前年比54%増だった。Facebookの2015年3月の一日当りのアクティブユーザー数は936万人で、83%はアメリカ国外からのアクセスだった。月間アクティブユーザー数は、14億4,000万人に上る。Facebookは、動画再生でYouTubeの強力な競合となっている。4月のFacebook動画の再生回数は1日当り40億回と、7ヶ月前の10億回から大幅に増えている。
11位:Disney
ブランド価値:346億ドル/前年比:26%増
Disneyのアニメーション『アナと雪の女王』は、全世界で約13億ドルの興行収入を稼ぎ、アニメ映画史上最高のヒットとなった。映画全体でも歴代6位の記録となった。Disneyは、映画チケット以外にも、『アナと雪の女王』のライセンス商品を販売している。Walt DisneyのCEOであるBob Igerは、『アナと雪の女王』関連のライセンスは、Disneyの保有する資産の中でも5本指に入る重要なものだと述べている。
12位:AT&T
ブランド価値:291億ドル/前年比:17%増
AT&Tの2015年第一四半期の解約率は業界最低の1.02%で、第一四半期としては過去最高の実績だった。AT&Tは最大のスポーツ協賛企業の一つで、2014年のNBAチャンピオンであるSan Antonio Spursの本拠地、2014年のワールドシリーズ覇者であるSan Francisco Giantsの本拠地、Dallas Cowboysの本拠地で2015年のカレッジフットボール全米王座決定戦を開催したスタジアムなどのネーミングライツを保有している。
13位:Amazon.com
ブランド価値:281億ドル/前年比:32%増
Amazon.comは創業20年目に当たる昨年、920億ドルの売上を記録した。投資銀行Bairdのリサーチアナリストは、Amazon.comの売上が2020年までに2,000億ドルに達すると予測している。急成長を続ける小売り事業の他にも、Amazon Web Servicesは昨年50億ドルの売上を記録した。クラウドサービス事業の売上は、2015年に75%成長することが見込まれている。
14位:Louis Vuitton
ブランド価値:281億ドル/前年比:6%減
Louis Vuittonの売上は、ユーロベースでは前年から9%増加したが、ドルに対するユーロの価値下落によって、今年のランキングではトップ10から漏れた。(ブランド価値算出の為替レートは、5月6日時点のものを採用している。)Louis Vuittonは引き続き世界で最も価値のあるラグジュアリーブランドであると同時に、最も利益率の高いブランドで、営業利益率は35%台後半となっている。
15位:Cisco
ブランド価値:276億ドル/前年比:2%減
世界最大のコンピュータネットワーク機器開発会社であるCiscoは、CEOを20年間務めたJohn Chambersが7月に退任すると発表し、新しいトップを迎えることになる。Chambersの元で、売上高は10億ドルから480億ドルに増えた。昨年は、1億ドルを投じて、「Internet of Everything」をハイライトした広告キャンペーンを実施した。
16位:BMW
ブランド価値:275億ドル/前年比:5%減
「究極のドライビングマシン」のキャッチコピーで知られるBMWは、世界の高級車市場で首位の座を獲得したが、AudiとMercedes-Benzとの差は僅かだ。BMWの販売台数は、過去最高の181万台で、2013年から9.5%増えた。好調だった中国市場では、価格競争が激化し、販売は鈍化した。
17位:Oracle
ブランド価値:268億ドル/前年比:4%増
Oracleを40年前に創業した伝説的なCEOであるLarry Ellisonが、昨年9月に退任した。世界で第5位の富豪であるEllisonは、会長兼CTOとして会社に残る。データベースソリューションを提供するOracleは、世界145ヶ国に展開し、40万社の顧客を抱える。
18位:Nike
ブランド価値:263億ドル/前年比:19%増
Nikeは、NBAとの長期のユニフォーム契約締結が間近となっている。Nike製のユニフォームが使用されるのは、2017-18シーズンからとなる。Nikeはアメリカのバスケットボールシューズ市場においては、子会社のJordanブランドを含め、95%のシェアを持ち、ほぼ独占状態を築いている。3月には、NFLとのオンフィールド・アパレルの契約を延長した。この契約は2012年に締結し、2019年まで延長された。
19位:Intel
ブランド価値:258億ドル/前年比:8%減
Intelのブランド価値は3年連続で減少した。Intelの売上の60%は低成長のPC事業が占め、スマートフォンやタブレットへの対応に苦戦している。昨年は研究開発費に110億ドルをつぎ込み、新しいヒット作の開発を模索している。Intelは、毎秒10億個のトランジスタを生産している。
20位:Wal-Mart
ブランド価値:247億ドル/前年比:6%増
Wal-Martはブラジル、チリ、カナダ、日本、イギリスなど27ヶ国に11,000店舗を展開し、毎週2億4,500万人の顧客にサービスを提供している。アメリカ国内では、4,000店舗を運営している。売上の成長は鈍化しているが、Wal-Martは依然として世界最大の企業で、その売上高は4,860億ドルにも上る。Wal-Martは、全世界で220万人の従業員を抱えている。
21位:Verizon
ブランド価値:245億ドル/前年比:14%増
Verizonは、全米で最大の広告主の一つで、昨年は、宣伝広告費に25億ドルを費やした。VerizonはAppleストアの成功を真似て、ここ数ヶ月で巨大な旗艦店を3店舗オープンした。これらの店舗は「ライフスタイルゾーン」に区分され、Verizonのキオスクや通常店舗に比べて品揃えが遥かに豊富になっている。
22位:American Express
ブランド価値:234億ドル/前年比:13%増
American Expressは、使用額で世界最大のクレジットカード発行会社だ。世界130ヶ国以上で展開し、クレジットカードの発行枚数は1億1,200万枚に上る。今年、American Expressの重要な顧客であるCostco Wholesaleは、16年間に及ぶAmerican Expressとの独占契約を2016年に終了し、Visaと提携することを発表した。Costcoは、世界で二番目に大きい小売り企業だ。
23位:Honda
ブランド価値:226億ドル/前年比:3%減
Hondaの前期決算は、利益が9%減少した。エアバッグのリコール問題で、Hondaの品質に対する評価が低下し、売上が減少したためだ。Hondaは、2014年に米国で最も売れている乗用車(ピックアップトラックを除く)に2モデルが選ばれている。(CR-V 5位、Civic 6位)
24位:Mercedes-Benz
ブランド価値:225億ドル/前年比:5%減
Mercedes-Benzの2014年の販売台数は前年比11%増の163万台となり、4年連続で新記録を打ち立てた。成長をけん引したのは、主にS-Class、コンパクトカー、新C-Classだった。F1においては、契約ドライバーのLewis HamiltonとNicoRosbergの活躍により、 2014シーズンには初めてコンストラクターズチャンピオンを獲得した。
25位:Budweiser
ブランド価値:223億ドル/前年比:4%増
Budweiserの販売量はアメリカ国内で減少を続けているが、アメリカ国外では2014年に5.9%伸び、アメリカ国外の売上比率が60%以上となっている。中国、ブラジル、イギリスでの成長が大きかった。中国では、5年連続で二桁成長を続け、プレミアムビールでは一位の座を獲得している。
※100社の完全リストは下記から。
http://www.forbes.com/powerful-brands/