ビジネス

2022.05.26

スタートアップ創業者は不景気の可能性をどう捉えるべきか?

世界中のテック業界のセンチメントに明らかな変化が起こりました。テック株がまず軒並み下落しました。資金調達よりもレイオフなどのニュースが増え、ツイッターでは業界のオピニオンリーダーたちが「テックブームは終わった」などと断言しました。中でも目立ったのがBenchmarkのBill Gurley氏で、以下のようにつぶやいています。

「今の世代の起業家やテック投資家のバリュエーションの相場観は、13年間にもおよぶ素晴らしいブルマーケットの後半にかけて形成されたものです。それを「アンラーン」するのは、多くの人にとってつらく、驚くことばかりで、不安になるかもしれません。受け入れられない人もおそらく出てくるでしょう」

私自身も、まさにその大変恵まれたブルマーケットの中で価値観を培ってきた世代の1人です。また皮肉にも、社会人になる少し前にはサブプライム住宅ローン危機(リーマンショック)も経験しています。大学2年生になる前の夏休み、私はアメリカの連邦預金保険公社(Federal Deposit Insurance Corporation)のインターンに参加していました。銀行が破綻した際の保険を提供するアメリカ合衆国政府の公社なのですが、例年通りの夏なら、特に忙しくないインターン先だったはずです。しかし、偶然にも私がいたのは2008年の夏で、株価が大暴落し、銀行が次々と破綻していく恐慌の最中にありました。毎週のように新たなニュースが飛び込み、典型的な行政機関だったはずが、まるでウォール・ストリートの立会場のように姿を変えていました。私もまだ若く経験不足であったため、状況を完全には理解できていませんでしたが、当時の雰囲気だけは覚えています。深刻でした。

そして今、しばらくぶりに同じ空気を感じています。インフレが進み、金利が上昇し、サプライチェーンの混乱が未だ解消されず、ウクライナ問題が激化する危険性を抱えるなど問題が積み重なり、状況は確かに悪化しています。

スタートアップにとって特に影響が大きいのが、テック株が下方調整局面に入ることによるエコシステムへの直接的な打撃です。少し前まで未上場市場の投資ラウンドの大型化やバリュエーションの高騰を牽引していた海外クロスオーバーファンドの勢いは、上場市場のセルオフからの痛手が癒えぬまま終わろうとしています。クロスオーバーファンドで最も有名なTiger Globalも、今年は44%の減益になると噂されています。私自身が各方面から聞いている話でも、以前は日本のスタートアップに注目していた投資家の多くが、乗り気でなくなり、少なくとも以前より重点を置かなくなってきているそうです。これは日本のスタートアップのポテンシャルに問題があるというよりは、投資家たちが自らの損失への対処に忙しいことがより大きな原因と思われます。
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文=James Riney

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