「僕の友だち同士が喧嘩して、悪口を言い合う姿を見た時、それぞれに悪いところはありましたが、ネガティブなことばかり気にしているのは良くないと思ったんです。
(自分に置き換えてみると)人から『そんなこと絶対できない』とか、自分を否定するようなマイナスな意見を言われ、それを気にしていると、自分のやりたいことに集中できなくなってしまうのです」
周囲の目を気にすることが、自分の好奇心を阻害する。その気づきが、ハリソンに変化をもたらしたのだ。
将来の夢は建築家か弁護士
こうした経験を経て、現在、ハリソンの武器となっているのが、抜群の「プレゼンテーション力」だという。次のように自信をのぞかせる。
「ディベートや発表が大好きです。いま通っている課外のクラブでは、クラスの最終日にプレゼンのコンペティションがあり、誰が最も上手だったかを評価し合うのですが、だいたい僕がいつも1番です」
母親も息子のプレゼン力には驚いている。
「普通はプレゼンで目の前に100人いたら緊張しますよね。でも彼にとっては、まさに周囲が気にならなくなったからこそ、それは1対1で喋るのと同じこととして捉えているようです(笑)」
前出のワールド・フード・フォーラムで、ハリソンと国連のコラボレーションを仲介したFAOの加藤知子も、「彼は堂々としていて、自分の考えを情熱的に伝える力を持っています。探求心と好奇心には脱帽しますし、それらを基盤に事実を追求しているからこそ、自信を持ってプレゼンができるのでしょう」と高く評価する。
またハリソンのプレゼンテーションは、広くて深い確かな情報収集にも支えられている。
「(プレゼンや絵本を書くための)情報のインプットには、SNSやグーグルの検索を使っています。とはいえ、そこで得たものは間違っているかもしれません。なので必ず3つか4つのウェブサイトを見てから『これは本当の情報なんだな』と考えるようにしています。今回、絵本の監修を未来館にお願いしたのも、正しい情報を載せたいと思ったからです」
また、地球の現状について知っていることをシェアしたいとの想いから、前述のように自作のメディア「George’s room」も立ち上げた。今後はこれを複数言語で展開して、世界中の人たちと意見交換ができる場にしたいという。
最後に将来の夢をハリソン本人に聞くと、「地球に優しい家をつくってみたい」を理由で「建築家」という答えが返ってきた。得意のディベート力を活かせる弁護士にも興味があるという。
取材が終わると母に「Can I check books here?」と一言。ミュージアム内の本を読み始めた
まだ9歳。ジョージ・Y・ハリソンが今後どのような分野で活躍していくのか、いまから楽しみだ。