ビジネス

2022.05.20

カゴメCHROが「生き方改革」を推進する理由

有沢正人 カゴメ常務執行役員CHO(最高人事責任者)


10年後の姿を現在価値に引き直す


──働き方改革ではなく「生き方改革」を展開している。

有沢:海外出張で現地CEOと日本の単身赴任の話をしたら、「それは刑罰か?日本人はおかしい」と言われた。確かにその通りだ。労働生産性を高める働き方の改革は会社側の見方だが、家族が一緒に暮らしたり、空いた時間を好きに使う「暮らし方改革」も必要。両方を合わせて、「生き方改革」とした。

具体的には希望の勤務地で一定期間働ける「地域カード」を付与したり、副業を解禁した。副業は他社と雇用契約を結んでもいい。ほかの役員から「優秀な人が流出する」と指摘があったが、人をリテンション(維持)するのではなくアトラクト(魅了)する会社になればいい。

──効果は出ているか。

有沢:キャリア登録型採用では、元テレビアナウンサーなど異業種の人も来てくれた。異なる背景や価値観の人がいると、新しいものが生まれやすい。カゴメは25年に「トマトの会社から野菜の会社に」と経営戦略を掲げているが、プロパーと中途入社の人の間で活発な議論があり、各本部の事業戦略に生かされている。人事戦略は経営戦略と事業戦略をブリッジさせるインフラ。CHOも人事屋ではなく、経営戦略と事業戦略を熟知しなければならない。

──HRBP(人事ビジネスパートナー)を導入している。

有沢:HRBPは当社では「人材育成担当」と呼んでいる。カゴメのHRBPは、現場の従業員が自分たちでキャリアを組み立てるためのサポート役。現場の痛みがわからない人はそのサポートが難しいので、HRBPは事業部の経験がある人ばかりだ。

──今後の人事戦略は。

有沢 経営計画の推進を主体的にサポートしていく。「こういう新規事業をやりたい」となったとき「できる人がいません」では話にならない。10年後のカゴメのありたい姿を現在価値に引き直して、未来の必要な人をつくっていきたい。

有沢正人◎カゴメ常務執行役員CHO。慶應義塾大学商学部卒業後、協和銀行(現りそな銀行)、HOYA、AIU保険(現AIG損害保険)を経て、2012年カゴメに入社。12年、執行役員人事部長、17年、執行役員CHO就任、18年4月より現職。

文=村上 敬 写真=ヤン・ブース

この記事は 「Forbes JAPAN No.094 2022年月6号(2022/4/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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