「グーグルでも当時インターンであったにもかかわらず、開発した機能が正式リリースされたという話も聞き、唯一無二の存在だと思いました。彼と事業をやりたいと思って、口説き続けました」
竹内は自らのアイデアを事業化しようと考え、さらに内容をブラッシュアップして、辿り着いたのが記憶の定着をサポートするビジネスだったという。竹内は次のように語る。
「学校で使われる教材は、全部の答えが載っている教科書か、ノーヒントの演習問題かどちらかです。
しかし記憶で重要なのは、思い出す行為を継続的に行うことなのです。授業を受けたが理解できていない状態で問題を解いても、分からないから答えを見ます。これではまったく記憶にはつながっていかない」
「でも、4択でどれかが正解と言われたら、なんとなくでも授業を思い出し回答しようとします。機械がさまざまな角度からヒントを与え、問題形式を徐々に難しくしていく。答えられるかどうか、ギリギリのラインを繰り返しながら思い出すという行為ができる仕組みになっており、それが記憶の強化につながるわけです」
都内のある中高一貫校では、コロナ禍での休校期間中にモノグサを導入したが、英検3級受験者の合格率が前年の59%から93%に、準2級では34%から80%に上がったという。
東京都中野区の公立小学校では、2021年に実証を実施。漢字テストの点数が2〜3割上昇し、学年によっては2倍にまで上がったという。また大阪府羽曳野市の中学校では英単語の勉強に、2週間、朝10分利用し、正答率が16%アップ。3週間後の抜き打ちテストでも、点数は落ちなかった。
記憶にお金を払う人はいなかった
いまでこそ、モノグサは数字としても結果が現れるようになったが、障壁はいくつもあったという。当初は、to C向けに事業展開することも考えたが、何より「記憶」には市場が存在しなかった。
「記憶にお金を払おうと考えている人はほとんどいなかったんです」
こう語る竹内が最初にターゲットに置いたのは学習塾だった。
「塾には、『受験』という時間制限を持つ学生が多く存在します。ここが、記憶のニーズが最も顕在化しているマーケットだと考えたのです」と竹内は振り返る。
私立校でも同様に進学実績を伸ばしたいという明確なニーズがあり、小中高で導入が進んだ。