日本酒が好きである。たまたま社内に日本酒好きが非常に多かったこともあるが、きっかけは、平和酒造の「紀土」との出合いである。
8年ほど前、ベンチャー系のイベントの懇親会に特別出店していた和歌山県の平和酒造。居合わせた知人から「中山さん、この蔵の日本酒、おいしいから飲んでみなよ」と促され、少しだけ口にしてみたことが、日本酒との付き合いの始まりだ。
それまでは、日本酒Loverではない人の多くが思い描くような「学生時代のパック酒イッキ飲み」「おじさんぽい」「喉奥でウッと苦しくなるような味」といったイメージを、食わず嫌いの感覚で勝手に抱いていた。
しかし、「紀土」を口にした瞬間に、世界が変わった。とてもフルーティな味わいで、洒落た香りで、それまでの印象が一気に覆った。以来、日本酒の魅力にハマっており、食事に行ってアルコールを頼むときも、できる限り日本酒を選ぶようにしている。とにかくさまざまな料理に合うのだ。
ちなみに、好きな日本酒は平和酒造の「紀土」にはじまり、新政酒造の「No.6」シリーズ、新澤醸造店の「伯楽星」、北海道にできてまだ数年の上川大雪酒造「上川大雪」、日本酒が再注目されるきっかけをつくった旭酒造「獺祭」など、挙げればキリがない。
よく、日本酒全体を見て、日本酒の市場は下降傾向だと指摘する人もいるが、実は国税庁のデータでは、純米吟醸や純米酒といった高付加価値の日本酒は成長傾向にある。
これは、こだわりぬいたものに消費が移っていっている証しだと思う。
ただ、世の中にありとあらゆる種類のアルコールや飲料があふれるなか、いま売れることだけにこだわっていたら、成長基調に乗せるのは不可能だっただろう。
日本酒は、時の技術や消費者の嗜好を鑑みてつくり方を柔軟に変えてきた。だがそのベースには、数百年にわたる酒づくり産業全体の歴史の積み重ねがある。その上に新たな時代の知見が加わり、進化してきたことは言うまでもない。