後悔は不可避だが有効活用すべき ダニエル・ピンクの教え

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あなたは「後悔しない」哲学を人生のモットーとしているだろうか?その場合、その戦略を考え直した方がよいかもしれない。この考え方が意思決定や人生全般への満足度を下げている可能性がある。

ダニエル・ピンクの最新のベストセラー本『The Power of Regret: How Looking Backward Moves Us Forward(後悔が持つ力 後ろを向くことが前進を促す理由)』では、ピンクが心理学や神経科学、経済学、生物学、その他の研究を利用し、後悔の概念に関する感情や行動について広く持たれている思い込みに反論した。

ピンクは「World Regret Survey(後悔に関する世界調査)」で世界中の人々に対し直接調査を行い、後悔がこれほど強力なものである理由や、より良い人間になる上で後悔が教えてくれるものについて正確に見極めるべく、数千件の回答を集めることができた。

ピンクは興味深いことに、自分には自由意志があると信じていた人は約85%だったが、物事が起きる背景には理由があると信じている人は約79%だったことを発見した。人々は、後悔の著者であり役者でもあり、二重の役割を持っているのだ。

ピンクは「最初はこれが非常に厄介なものだと思った」とし、「矛盾しているように見えたからだ」と述べた。

「しかしそれから、もしかしたらもっと深い意味があるかもしれないと気づいた。ノースウェスタン大学の性格心理学者であるダン・マクアダムスは、私たちが自らのアイデンティティー、自己意識をナラティブ(物語)を通じて作り出すと述べ、2つの支配的なナラティブがあると語っている」(ピンク)

ピンクが示唆した最初のナラティブは物事が良い方向から悪い方向へと移行する「汚染のナラティブ」で、もう一つは物事が悪い方向から改善する「取り戻しのナラティブ」だ。私たちは心理的健康の観点から一般的に、人生を取り戻しのストーリー、つまり上昇傾向にあるものとして捉えている。

ピンクにとって、私たちが人生の物語の登場人物なのか、それとも物語を書く著者なのかの答えは明確だ。私たちは両方の役割を持つのだ。

「私たちがどこで行為主体性を持ちどこで持たないか、物事を支配するのが文脈や状況、環境である場合や、自分自身の努力や行為主体性が物事を形成する場合を少しずつ明らかにすることは、人生の非常に重要な問いだ」とピンクは続けた。
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翻訳・編集=出田静

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