岐路に立つ免税品販売事業
コロナ禍の非常に厳しい時期にトラベルリテール業界を支えた海南省だが、現在は予想外の不振に苦しんでいる。2022年1月と2月の売上高は、合計で前年比33%増の20億ドル近くにまで達したが、中国での新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への感染者数の増加と、それに伴うロックダウンにより、3月に入ると売上は前年比で減少した。感染拡大の規模を見る限り、4月も売上減少は続くおそれがある。
タペストリーはすでに、予断を許さない中国の経済状況の影響を実感している。同社の2022年度第2四半期決算(2022年1月1日締め)を見ると、大中華圏(中国、香港、マカオ、台湾)での収益の伸び率は、大幅な上昇を記録していたそれまでの四半期と打って変わり、1桁台前半にとどまった。
とはいえ、過去四半期の数字は、コロナ禍で業績が大幅に落ち込んだ時期との比較であるため、伸び率が見かけ上高くなっているのは間違いないだろう。
全世界で見ると、タペストリーの2022年度第2四半期の売上高は21億4000万ドル(前年同期比27%増)だった。その内訳は、15億ドルがコーチ、5億ドルがケイト・スペード、1億1600万ドルがシューズブランドのスチュアート・ワイツマンによるものだった。
また、2021年度の総売上に大中華圏が占める割合は19%で、2019年度の15%から上昇した。
国境をまたぐ旅行の復活が遅々として進まないことから、中国以外のアジア太平洋地域の国々では、トラベルリテールの売上はいまだに停滞状況にある。それだけに、海南省に拠点を設け、中国にフォーカスするという同社の判断は理にかなっている。
コーチとスチュアート・ワイツマンの両ブランドは、大中華圏の売上が占める割合がそれぞれ22%、38%と、全体で見た割合(19%)よりも高くなっていることから、トラベルリテールチャネルで規模の拡大を目指す有力候補になるだろう。
視野をより広くとり、全販売チャネルを視野に入れた場合でも、今回の動きにはメリットがあると考えられる。インフレをはじめとした経済への逆風が、消費者心理にマイナスの影響を与え始めたなかで、過剰な在庫を抱えた一部のファッションブランドが、欧米市場の変化にうまく対応できないのではないか、との懸念があるからだ。
ウェルズ・ファーゴは4月に入り、ラルフ・ローレンやVFコープ(「Vans(ヴァンズ)」などの親会社)をはじめとするファッション系企業の投資判断を引き下げた。だがその一方で、不況に強いレディース向けバッグのカテゴリーに注力していることを理由に、タペストリーやカプリ・ホールディングス(「マイケル・コース」の親会社)などについては楽観的な見通しを示している。