失敗あるある3:事業拡大のためのコストが捻出できない
売り上げができ資金調達に成功すると、事業拡大のフェーズに入る。このフェーズに入ると、今まで社長がやっていたバックオフィス業務に専任担当を採用したり、おざなりにしていたコンプライアンスやセキュリティサービスを導入するようになる。
また、営業や開発のマネジメントを社長や役員だけでは賄えなくなるため、マネージャー職の採用も必要になる。採用もリファラルだけでなく、紹介業者や媒体を使うようになるだろう。
このように拡大期にはあらゆる部門でコストが増大し、「どれだけ売っても赤字」という絶望的な状況に陥ってしまう可能性があるのだ。
上場が視野に入るタイミングでは、監査法人や証券会社の費用だけでも年間1000万円以上になり、J-SOX(日本の内部統制報告制度)や監査体制の構築にも費用がかかってくる。
回避策:間接経費を織り込んだ価格設定をする
ソフトバンクなどがよくやる「半永久的な値引きキャンペーン」が参考になる。広告費用やマネージャー人件費といった間接経費を織り込み、定価は高めに設定する。顧客拡大が必要な時期にはキャンペーンと称して価格を安価に抑える手法だ。
勢いが必要なくなったタイミングでキャンペーンを止めれば、顧客との軋轢も生まれない。
もう一つ、組織拡大による効率化を行い、その効果が制度整備コストを上回るのを待つというのも現実的な解決策だ。
規模が大きくなれば「規模の経済性」が働く。事業が拡大すれば、当初の価格でも成立するようになるかもしれない。スタートアップの成長はスピーディーであるため、事業成長が見込めていれば小細工をする必要はないという言い方もできる。
スタートアップは課題解決の連続だ。それは「顧客課題」以上に、自社の「事業開発における課題」の解決という意味である。トラクションや売り上げ出ない問題をクリアしたと思えば、次に来るのはお金の管理や、スケールに向けての仕組みづくり。
売り上げが上がらないという課題は自覚できるが、それ以降のフェーズでの課題の存在そのものに気づかず「なぜか成長できない」という状態に陥ることも多い。
次回からはスタートアップ経営者へのインタビューを通して「失敗あるある」とその回避策について明らかにしていきたい。