大半の人はこうした状況を体験したことがあるはずだ。これは決して良い気分ではない。またこれらの体験は、目に見えない方法でパフォーマンスに影響を与えかねない。
まずは所属の定義について考えよう。所属とは、自分の存在を認められ、意見を聞いてもらえ、自分らしく振る舞っても受け入れられると感じることだ。人間は誰もが所属のニーズを持っていて、所属は仕事において強大な力だ。
しかし、所属を妨げる大きな障壁の一つが、周囲になじむことだ。米作家のブレネー・ブラウンは「周囲に適合するには状況を評価し、相手に受け入れられる人になることが必要だ。一方、所属のために自分の個性を変える必要はない。必要なのは、自分らしくあることだ」と述べている。
溶け込む必要性は「カバリング」と呼ばれる状況を生むかもしれない。『Belonging at Work(職場への所属)』の著者であるローズ・ペリーは、自分自身のある側面が原因で周囲から部外者視されかねない場合、それを意図的に隠したり、見せないようにしたりすることがカバリングだと説明している。
私たちは周囲に溶け込むため、「既に認知され軽蔑の対象となるアイデンティティー」を抑えるか、隠す行動に出る。カバリングは真の自分、つまり所属を犠牲にするものだ。
所属を理解する上で重要なのが、「所属」すべき“支配的なカルチャー”を知ることだ。全ての組織には独自の支配的なカルチャーがある。そして、評価や報酬を得られるかどうかは、そうしたカルチャーに基づいて決まる。
私たちはみな、所属のために何かを犠牲にするものだが、その企業のカルチャーで評価されない側面を持つ人の場合、自分らしく振る舞うリスクはさらに高まる。こうして周囲になじもうとする行動やカバリング、コードスイッチング(規則の切り替え)が生じるのは当然だ。
最近のデロイトの調査では、61%の人が職場で自分らしさを隠していることが示された。しかし、この数をさらに細かく分類すると、自らをLGBTQ+(性的少数者)と考える人の間では83%がカバリングを経験していたが、白人男性の異性愛者の間ではそれがわずか45%だということが分かっている。
こうしたデータからは、集団に溶け込もうとするかどうかにはばらつきがあること、所属のために何かを隠さざるを得ないという意識が一部の人の間で特に強いことが示されている。