MBAの就職活動には、「オンキャンパス」と「オフキャンパス」という2つの方法があって、オンキャンパスというのは、企業がキャンパスに来て、そこでレジュメを募集する方法です。今はバーチャルになってしまいましたが、当時は学校に面接官が来て、そこで面接をやっていました。オフキャンパスというのは、自分でネットワークを使ってポジションを探す方法です。
私は基本的には、オンキャンパスに来ている、大手のIT企業にレジュメを送っていました。大体、そういうところだとコーヒーチャットというカジュアルな面談の機会を提供しているので、それに申し込んで、ハイヤリング・マネージャーやリクルーティングのチームの人たちと話して顔を売っていましたね。わりとすぐにオファーはもらえました。
横田:MBAの卒業生は毎年大勢いるわけで、その中でも差別化しなければいけないと思うのですが、具体的にはどのようなアピールをしたのでしょうか。
中里:新卒と違って、MBAには4〜5年の職務経験がある人が多いので、アピールの方法もフレキシブルですし、難易度も新卒よりは低いと個人的には思っています。
とは言え、アメリカの国籍やグリーンカードをもっている人と比べたら、当然もっている人を採りたいだろうと思うので、自分のユニークなスキルが何かということについては結構考えましたね。
私の場合、やりたいことというよりは、M&Aや投資をバックグラウンドとしてやっていたので、その強みから逆算してポジションを決めました。具体的には、ストラテジーやファイナンス、コーポレートディベロップメントと呼ばれる企業投資の部門などです。自分のキャリアの強みが100%活きて、自分が一番になれそうなポジションを選びました。
やはり、自分の強みをとことん煮詰めるというか、クラスメイトが100人いても、絶対これは負けないみたいなものを自分で認識しておくことが大事だと思います。さらに言うと、MBAの前にそういう強みをつくっておく必要があると思っています。
竹崎:同じMBA卒として、耳が痛いです。ちなみに、中里さんは米本社からアマゾンジャパンへ1年間転籍されていますよね。その逆輸入は、かなり珍しいと思うのですが。
中里:そうですね。当時、個人的な理由で日本に戻らなければいけない事情があったので、LDP(リーダーシップ・ディベロップメント・プログラム)というMBA採用のプログラムチームに日本に異動したいと相談したところ、運よく日本に異動することができました。
短い期間でしたが、アメリカとは雰囲気も違っていて、アマゾンジャパンでの勤務はなかなか有意義な体験だったと思います。楽しかったですね。
加瀨:アメリカと日本では雰囲気が違っていたとおっしゃいましたが、もう少し詳しく教えていただけますか。
中里:同じ肩書きでアマゾンジャパンに横滑りしたので、そういう意味では日本とアメリカの違いがよく見えたと思っています。自分が所属した職種やチームでの範囲に限られる、個人的な感想ですが、アメリカは業務が細分化されてるんですよね。スペシャリストの集まりみたいな感じで、この分野のスペシャリストはこの人というのが決まっているのですが、日本ではアメリカに比べて人数が少ない。だから、アメリカと比べるとスコープ、つまり仕事の範囲が広いんです。私の場合は、アメリカだと1つ上のポジションの人が担当している業務のスコープをいきなり任せてもらえたので、スコープが大きい仕事ができたのは魅力的でしたね。
あとは、より意思決定に近い位置で仕事ができたのも良かったです。日本の経営陣のみなさんと密に働けてとても勉強になりました。また、日本は海外のマーケットの中でも市場規模が大きいので、シアトルの経営陣とも直接働く機会がたくさんあったんですよね。大きな意思決定を行う経営陣とここまで近い位置で働ける機会は、シアトルにいた頃は逆になかったので良い体験でした。あと、社食やフリードリンクのバラエティの豊かさにも感動しました。
竹崎:ありがとうございます。アメリカでの就労に関して、かなり具体的なプロセスを伺うことができました。では、次はアメリカの労働環境や待遇などについて伺いたいと思います。