だがその一方で、物事を簡潔にわかりやすく表現するのは、それほど容易なことではない。混乱を招く要素を省いて焦点を絞った説明をするには、不要なものを切り捨てるきっぱりとした姿勢が必要だ。さらに、こうした姿勢を常に意識し、努力し続ける姿勢も不可欠だ。
仕事上のキャリアの文脈で言うと、ここが、凡庸な存在と、プロフェッショナルでパワフルな存在を分けるポイントになりうる。
これはまた、時間をいかに有効に活用するかという問題でもある。
以下では、簡潔で要を得た自己アピールの力を活用し、キャリアを大きく飛躍させるための3ステップを紹介していこう。
1. まずは、目標を明確に提示する
明確さは、シンプルな表現の起点となる。なぜ自分をこのチームに加えるべきなのか。その理由を相手に明確に言葉で説明しない、あるいはできない場合は、相手に対して、「よくわからないもの(この場合は説明不足の求職者)を読み解く」というタスクを押し付けることになる。
結論を端的に言うと、こうした状況では、相手はこちらの意図をわざわざ読み解く気にはなれないだろう。そして、たとえその気になったとしても、それは当て推量にすぎない。当て推量は混乱につながる。そして、相手を混乱させた側は、将来のチャンスやクライアント、プロジェクト、昇進、仕事仲間を失ってしまう。
一方、自分について明確に説明できれば、あらゆることがずっとスムーズに運ぶ。相手は、こちらの人となりや、できること、価値、他の人との相違点、役立てるところ、そして、逆に受け入れ側がサポートすべきところなどを理解してくれるだろう。明確な自己アピールは、相手がこちらのことを知り、気に入り、信頼感を抱いて、「一緒に仕事をしやすい」と思ってもらえるきっかけになる。
さらに、自身のキャリア上の目標についても、はっきりさせておく必要がある。その際に、明確な目標設定には具体性が不可欠であることを肝に銘じよう。「何となく」何かを求めている、というレベルでは、前進は難しい。自分にとって一番大事なことは何なのか、できるだけ焦点を絞るのが望ましい。
2. 自らを検証し、目標の方向性と一致しないものはすべて捨て去る
ほとんどの人は、毎日を無為に過ごしながらも、自分のキャリアを前進させるためにやるべきことをする「時間がない」のはなぜだろうと不思議がっている。一方、抜きん出た成功を収めているプロフェッショナルは、自身の目標を環境に合わせて調整し、達成につなげる道筋を見つけている。そして、目標達成を妨げるおそれのあるものには近づかない。
こうしたプロフェッショナルの姿勢を身につけるために真っ先にすべきなのは、自分の時間の使い方や、関心を向けている分野や人物について現状を把握し、理解することだ。自分自身を検証し、一つ一つの選択が、「自分が最も求めるもの」を手に入れるうえで役立つかを見極めよう。もし役に立たないようであれば、目標達成に集中できるよう、不要な習慣や人物、気を散らすものとは思い切って縁を切ろう。