インド洋に散らばった26の環礁から成るモルディブは、自然の美しさと世界一流の宿泊施設で知られる。環礁を取り巻く海には生命があふれている一方で、環境問題も抱えている。
海面上昇はモルディブにとって喫緊の問題だが、幸いにも同国各地のリゾートではこの問題への取り組みが進んでいる。首都マレのすぐ北にあるギリ・ランカンフシは、そうしたリゾートの一つだ。
同施設では、潟に面した豪華なヴィラやレストラン3軒があるのに加え、独自の海洋生物学部門を持ち研究と宿泊客の教育を行っている。同施設が大きく懸念しているのが、気候変動によるサンゴの白化現象だ。
(c)Gili Lankanfushi
同施設で働く海洋生物学者エリネ・ポストマによると、最も深刻な白化現象は1998年に起きたもので、モルディブのサンゴ礁の90%以上が死滅。2016年にも、浅い水域のサンゴ礁の72%が死んだ。サンゴ礁の死滅は海岸の侵食につながり、国土の大半が海抜1メートル未満のモルディブでは人口も増加傾向にあることから、これは深刻な問題だという。
サンゴ礁の数が近年着実に回復しているとのことだが、助力が必要なことは確かだ。そこでギリ・ランカンフシは、サンゴ礁の数を増やす取り組みを企画した。
同リゾートは2014年、小さなサンゴの断片をひもに取り付けて育成する「コーラル・ラインズ・プロジェクト」を開始。時間をかけて育てたサンゴを、自然のサンゴ礁に移植している。この活動には滞在者も参加でき、大きな成功を収めてきた。宿泊客はウェブサイトへのリンクを受け取り、自分が関わったサンゴの育成状況を3カ月ごとに確認できる。
ギリ・ランカンフシではこれ以外にも、シュノーケルやダイビングなどを通じ、同地域固有の海洋生物を観察する機会が豊富に用意されている。ポストマによれば、施設内のサンゴ礁ではほぼ必ずアオウミガメと出会えるという。
「これは、アオウミガメが絶滅危惧種であることを考えれば、驚くべきこと。さらに、生態系のバランスが取れている環境にいるツマグロも同じくらい頻繁に見かける。(5月~10月の)南西モンスーンの季節にはオニイトマキエイがこちら側の環礁に戻ってくる。一番観察しやすいのはダイビングでだが、施設そばのサンゴ礁で餌を食べているところも見かけることがある」