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2022.04.04 07:30

ベンチャー投資のカギは「キャピタル・フォーメーション」にあり


ウィックハム:そうした知識や人脈の価値は極めて高いですね。例えば、起業家に私が最初に伝えるものの一つに、「成功の分配のべき法則(Power Law of Distribution of Success)」があります。これは、どんな領域であれ、上位1〜2%以内に入り、少しでも無駄を減らしていかないと、たちまちカーブを滑り落ちるように、上位10%へと下がり、売り上げにも大きく影響する、というものです。こうした落とし穴に陥らないためにも、起業家はキャピタル・フォーメーションの科学を理解しておく必要があります。

例えば、ある起業家がセールス担当副社長を雇いたいとします。ところが、数週間経っても進捗がない。理由を聞けば、起業家は「どうすればいいか分からない」というではありませんか。分からなくて当たり前です! 初めての経験なのですから。そういうときこそ、ベンチャー・キャピタリストを頼ればいい。同じような採用経験をしたCEOをすぐに紹介できますから。すると、何週間も悩んでいた問題がたったの数分の電話で解決するのです。これも、会社の成長を助ける“資本”です。もし有望なスタートアップであれば、カネを出資してくれる会社はいくらでもあるでしょう。しかし、ヒトの紹介となれば話は別です。

結局のところ、スピードと質なのです。あるCEOのコーチに聞いた話ですが、彼は顧客のCEOに「選択肢は2つ。専門家のネットワークを使って学びたいか、自分のペースで独学したいか。どちらがいい?」と尋ねるそうです。彼は、起業家にとっての最大の成功指標は学習速度だと考えていて、それを知るためにこうした質問をしているそうです。これにより、学ぶことへの飢餓感があるか、そして無用なプライドやエゴを捨て、助けが必要なときに素直に周りに相談できるかどうかわかるからです。

:それでは、日本の若い起業家たちがキャピタル・フォーメーションの本質を理解するにはどうすればいいのでしょうか?

ウィックハム:まずは、自己分析から始めます。自分はどんな人間で、何がしたいのか。目標は何か。何から情熱を得ているか。自分自身のことをよく理解していないと、キャピタル・フォーメーションや、起業家精神というものの本質を理解できないからです。

キャピタル・フォーメーションの戦略は、自分が求めている“人生という旅”によっても変わってきます。週末にビーチへ遊ぶに行くか、パリで数年間暮らすかで、取るべき行動は変わりますよね。キャピタル・フォーメーションの戦略も同じです。“起業”という旅に出る前に、まずは己を知り、それを無事に終えるには何が必要なのかを考えなくていけません。
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インタビュー=牧 兼充 写真=能仁広之

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