「ルロワ・メルランは自社の店舗に対する爆撃に資金を提供する世界で初めての企業になった。非人道的で、恐るべき強欲さだ」──。ウクライナ国防省は同日午前、ロシアによる攻撃で破壊されたウクライナ国内の店舗とみられる画像とともにツイッターにそう投稿した。「#IsolateRussia(ロシアを孤立させろ)」「#StopRussianTerrorism(ロシアのテロを止めろ)」というハッシュタグも添えた。
ウクライナ国防省はルロワ・メルランを名指しで批判した具体的な理由を挙げていないが、英紙テレグラフは19日、同社ロシア部門の幹部らの話として、イケアなど欧米の数社がロシア国内の店舗閉鎖に踏み切ったあと、「売り上げがいちじるしく増えた」と報道していた。
テレグラフが入手した文書によれば、ルロワ・メルランの幹部らは取引先に対し、「一部の企業が(ロシア)市場から消えた」あとの需要を満たすために供給を増やすよう要請していた。向こう3〜4カ月で、輸入品をロシア産品に完全に置き換える計画であることも伝えていた。
フォーブスはルロワ・メルランにコメントを求めたが、21日中に回答は得られなかった。ただ、同社は今月、ロシア国内の112店舗は「通常どおり営業」しており、営業を変更する計画もないと明らかにしている。
ルロワ・メルランなどの持株会社であるアソシアシオン・ファミリヤール・ミュリエ(AFM)は、世界に広がる約20の小売りチェーンの経営を支配しており、大富豪のミシェル・ルクレールとミュリエ家がそれぞれ4割ほどの株式を保有している。ルクレールはフォーブスの推定で40億ドル(約4800億円)の資産を有し、そのいとこでミュリエ家を率いるジェラール・ミュリエは一時、資産額が100億ドルを超えたこともある。
ルロワ・メルランを批判しているのはウクライナ国防省だけではない。ウクライナ最高会議(議会)のレシア・バシレンコ議員はテレグラフの取材に、ルロワ・メルランは「ウクライナの子どもたちが血を流しているのに平気でお金を稼いでいる」と指弾。「こうした企業には存在する道義的権利がない」と断じ、フランス政府による介入も求めた。
ロシアによるウクライナ侵攻後、何百社という外資系企業がロシアからの撤退を決める一方、撤退圧力が高まるなかでもロシアにとどまる意向を示した外資もある。大手ではスイスのネスレや米コーク・インダストリーズ、「バーガーキング」を展開する米レストラン・ブランズ・インターナショナルなどだ。ネスレの対応についてはウクライナのデニス・シュミハリ首相が批判し、ソーシャルメディアで同社製品の不買を呼びかける声も上がっている。