ロシアによるウクライナ侵攻はエネルギーを巡る様相を呈しており、将来起こり得る他の紛争の前例となるかもしれない。この紛争を「エネルギー戦争」と呼ぶのは、決して大げさな表現ではない。とはいえ、これは石油や天然ガス、低炭素技術に不可欠な重要鉱物などの資源を巡る争いを意味するものではない。この言葉は、発電所や送電線、石油精製所といったエネルギー施設が、両陣営の攻撃の主な標的となっていることを示している。
なぜエネルギー施設を攻撃するのか?
2022年の侵攻開始当初より、ロシア政府の戦略は、ウクライナの民間人、軍事施設、電力網に対する攻撃を柱としており、特に後者の2つに重点を置いてきた。一方のウクライナに関しては、西側諸国が国境を越えて長距離兵器を使用することをようやく許可した2024年になって初めて、ロシア国内への攻撃を開始した。ウクライナ軍は主にロシアの石油精製施設と貯蔵施設を標的としている。
これらの攻撃は、ロシアの首都モスクワ近郊のリャザニやカスピ海北端近くのボルゴグラートなど、ウクライナとの国境から遠く離れた製油所に深刻な被害を与えた。今年に入ると、ウクライナは無人機(ドローン)技術を採用し、独自のハードウエアとソフトウェアを開発することで、西側諸国による許可の必要性を回避するようになった。今月1日の「スパイダーウェブ」と呼ばれるウクライナ軍による攻撃では、数十機のドローンが各爆撃拠点に送られ、ロシア国内のいかなる標的も安全ではないということが示された。製油所に対して同様の攻撃が行われれば、ロシアにとっては特に大きな打撃となるだろう。
エネルギー施設を攻撃する理由については両国で異なるものの、一部重なる部分がある。ウクライナ軍はガソリンやジェット燃料、ディーゼルといった高付加価値燃料が生産され、備蓄されている製油所や貯蔵施設を標的にしている。これらの燃料は単位体積当たりの収益が原油より大きく、ロシアの戦争資金の主要な財源となっているためだ。こうした施設は高揮発性の液体やガスで充填されているため、軍事的には極めて脆弱(ぜいじゃく)だ。米政府系「ラジオ自由欧州(RFE)」などが収集した過去2年間の攻撃に関するデータからは、ウクライナ軍が攻撃の焦点をエネルギー施設に集中させつつあることが見て取れる。