経済

2025.06.21 12:00

過去5年間の原油価格の大変動を振り返る 紛争やパンデミックが大きく影響

イスラエルの攻撃を受けたイランの首都テヘランにあるシャハラン石油貯蔵施設。2025年6月15日撮影(Stringer/Getty Images)

イスラエルの攻撃を受けたイランの首都テヘランにあるシャハラン石油貯蔵施設。2025年6月15日撮影(Stringer/Getty Images)

イランとイスラエルの対立が激化する中、原油価格は17日に4%以上上昇し、ブレント原油先物は1バレル74ドル(約1万800円)と6カ月ぶりの高値をつけた。今回の急騰は経済の基本的な現実を浮き彫りにしている。つまり、石油は依然として国際貿易の生命線であり、その価格変動は世界の経済成長を形成する最も強力な力の1つであり続けているのだ。

原油価格と経済成長の関係は直接的であると同時に複雑だ。原油価格が高騰すると、経済活動に対する税金として機能し、事実上、経済のあらゆる部門で投入コストが上昇する。運輸、製造、農業、消費財のすべてがコスト上昇に見舞われ、景気拡大に水を差したり、インフレを助長したりする。逆に、原油価格が下落するとコストが下がり、消費者の購買力が高まるため、経済成長が促される。

新型コロナウイルス流行時の石油市場の崩壊と回復

過去5年間の石油市場の変動とその経済的影響に関する貴重な教訓を振り返ってみよう。最も劇的な出来事は、新型コロナウイルスが世界的に猛威を振るっていた2020年4月20日、ウエスト・テキサス・インターミディエート(WTI)原油先物が初めてマイナスを記録したことだ。この前例のない事態は、ロックダウン(都市封鎖)により経済活動が完全に停止したことで、需要の完全な崩壊を反映したものだった。

新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な流行)は石油市場に深刻な影響を及ぼした。世界規模で渡航が制限されたほか、工場の操業停止や外出禁止令により、ほぼ一夜にして日量数百万バレルの石油需要が消失した。これにより、貯蔵施設が満杯になり、石油生産者が買い手に原油を引き取ってもらうために料金を支払わなければならないという前代未聞の事態が生じることとなった。

だが、回復も同様に劇的だった。経済が再開し需要が急速に回復する中、原油価格は急反発。新型コロナウイルスのパンデミックからの世界経済の回復による需要の増加により、原油価格は高騰した。この回復は、次の大規模な石油危機の舞台を整えた。

ロシアによるウクライナ侵攻がもたらしたエネルギー危機

2022年2月24日、ロシアがウクライナに侵攻すると、石油市場は再び大きな衝撃を受けた。同年3月7日、WTI原油先物は1バレル133.46ドル(約1万9500円)、ブレント原油先物は同139.13ドル(約2万300円)に達し、2008年7月以来の最高値を記録した。

ロシアは米国とサウジアラビアに次ぐ世界第3位の石油生産国であり、ウクライナ侵攻の影響は特に深刻だった。侵攻の影響により、WTI原油価格は37.14ドル(約5400円)上昇し、52.33%の急騰を記録した。

この紛争は、地政学的な情勢が瞬時に世界のエネルギー市場を再編する可能性を浮き彫りにした。西側諸国によるロシアのエネルギー輸出に対する制裁は供給の混乱を引き起こし、世界的な石油貿易の流れが大きく変化した。ロシア産エネルギー資源への依存度が高い欧州諸国は代替供給元を探すことを余儀なくされ、世界的に需要と価格が急上昇した。

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翻訳・編集=安藤清香

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