とはいえ、この間MLBは実質的に「ストライキ」に入り、それがいっそうファンを白けさせた。結局、キャンプ期間を大幅に犠牲にしながら表面上は整えられたものの、例年になく今年の春は野球の話題が低迷していた。
それでなくても、3月は「マーチ・マッドネス(3月の熱狂)」という異名があるように、アメリカでは大学バスケットボールの最終(プレーオフ)トーナメントが行われることもあり、野球はマイナーな位置に置かれてしまうのだ。
去年以上に大谷選手は活躍する
とにかく「ストライキ」というのは実にいただけない話だ。アメリカンフットボールやバスケットボール、ホッケーなど、他のプロスポーツの待遇と比較すれば、選手側に不満が溜まるのもわかるが、野球が相対的に人気を失っているという現実にも目を向けるべきだ。
実際、年間で162試合もあり、各試合がほとんど3時間を超えるというエンターテインメントは、ネットフリックスやアマゾンプライムなどの視聴で忙しい若者にとっては、なかなか食いつきにくいのも確かだ。そんなプロスポーツは他にない。
「そういう現実を見据えないで、ストライキなどやっている場合なのか?」という、アンチ野球ファンの陰口が筆者のまわりでも広く聞かれ、その批判は、経営側だけでなく、カネの要求に忙しい選手側にも向いている。
その点、MLBで活躍する日本人選手はおしなべてカネの生々しい議論とは遠いところにいて、カネよりも野球という態度が少なくともファンの間には浸透している。
そこへきて、大谷翔平選手がロサンゼルス・エンジェルスの開幕投手を務めるのではという噂が広まり、ファンサイトを中心に野球の話題が少しずつ戻ってきた。
いまMLBで野球に対する清廉で真摯な姿勢の先頭を行くのが大谷選手であり、そのスーパースターが、野球選手なら誰でも夢見る開幕投手のマウンドに立つとなれば、ファンの注目度も高い。
MLBのサイトに寄せた記事で、スポーツジャーナリストのレット・ボリンジャーが、大谷選手がアリゾナのスプリングトレーニングで初めてブルペンに入ったときのことを取り上げた際に、まず触れたのはその彼の真摯な姿勢だ。
来年、大谷選手は年俸交渉が自由にできるフリーエージェントの資格を得るが、エージェントを使ってかなりの額を引き出すこともできる。しかし、そのことについて質問が向けられると、大谷選手は、エージェント次第のことなので、自分はシーズンに集中していて、契約のことなど全く考えていないと答えたというのだ。