ロシアのインターネットは分散型?
一方、ロシアは近隣諸国と多くの通信を共有する分散型インターネット基盤と言われ、ネットの制御が難しい。ニューメキシコ大学やアリゾナ州立大学の研究者らが発表した2019年の調査では、ロシアのインターネットは米国やドイツ、英国よりもチョークポイントを設けられる潜在性が少ないとされた。
この理由は、同国が中国やインド、エジプトなどの強い制約を課している国と比べて早い時期からワールドワイドウェブを採用したことにあるかもしれない。こうした国では、インフラの大部分が既にWeb 2.0の検閲を頭に入れて構築された。
それでもロシアは既に始まっていたインターネットの検閲をさらに強化していて、ロシアがウクライナに侵攻してからはそれがさらに厳しくなっている。
同国では、コンテンツ削除と当局への登録を巡りグーグルとの間で2018年に対立が生じ、同社のスンダー・ピチャイ最高経営責任者(CEO)は米下院司法委員会に出席することになった。ロシアではその後、2019年にさらに広範なサイバー法が可決された。
その中には、ディープパケットインスペクション(DPI)技術の導入を含め、ロシアのネットワークをさらに中央に集めるためのいわゆる「主権インターネット法」も含まれている。DPIは、送信者と受信者の情報に基づき暗号化されたメッセージさえも傍受できるようにするものだ。
監視の強化
最後にロシアは、自国版ドメイン・ネーム・システム(DNS)の構築を計画してきた。DNSは、コンピューターが名前を基にウェブサイトを見つける登録簿だ。
これが実現すれば、ユーザーは中央に集められたグローバルDNSから除外されたロシアのドメインも見つけられるようになる。ウクライナがロシアのドメインの無効化を求めていたが、これは国際調整機関アイキャン(ICANN)が取り下げた。
ロシアは米国や欧州への報復として、フェイスブックやツイッター、英BBC放送や独ドイチェ・ヴェレ(DW)、ラジオ・フリー・ヨーロッパ(Radio Free Europe)のウェブサイトなど、一部のニュースやソーシャルメディアへのアクセスを遮断した。ペイパルやブッキング・ドットコム、ネットフリックス、スポティファイなど他の欧米のネットサービスは、自発的にロシアでの事業を停止している。