とはいえ、微細藻類が今後、世界に有益なインパクトをもたらしていきそうなことをうかがわせる動きも顕在化している。
ちとせ研究所で藻類生産事業を統括する星野孝仁は藻類業界の現状をこう説明する。「いまでは、藻類を扱う企業の多くが独立した事業として運営されています。こうした企業がつくる製品は、医薬品や栄養補助食品など付加価値の高いものに限られていますが、それも変わっていくでしょう」
現時点の藻類産業は、いくつかの点で、製品がいまほど普及していなかった段階の代替肉産業に比せられるかもしれない。藻類の最初期の用途のひとつに合成バイオ燃料があるが、これは当時の企業が需要を満たせるほど生産を拡大できず、経済効率性を高められなかったため、大きな壁にぶつかった。
しかし、ここ数年、藻類業界ではフォトバイオリアクターと呼ばれる密閉型バイオリアクター(生体反応器)の利用が広がり、屋外の変化しやすい気象条件に左右される施設への依存度が下がった。フォトバイオリアクターは基本的に溶存二酸化炭素と太陽光しか必要とせず、オープン型のものよりコスト効率も良い。
そのため、藻類企業はバイオ燃料以外の用途、たとえば食品原料や飼料、バイオプラスチックの代替素材などにも目を向けるようになった。これらは大規模な生産が可能で、社会がより取り入れやすいものでもある。カリフォルニア大学サンディエゴ校のスティーブン・メイフィールド教授らが開発した、藻類由来の生分解性サンダルなどもそのひとつだ。
藻類は豊富で、世界中にあり、多種多様な消費者向け製品に活用できる。そして、環境に対する負荷を効果的に下げることもできる。藻類産業の将来はきわめて有望だと断言しよう。