そこでの問題は、米国の原油輸入額に占めるロシアの割合は2021年時点で3.5%にすぎないことだろう。
米国勢調査局のデータによれば、米国の昨年の原油輸入額が最大だったのはカナダからで57%。次がメキシコの9.3%だった。つまり、米国は輸入原油の約3分の2を隣国から調達しているのが現状だ。
ただ、昨年の原油輸入額に占めるロシアの比率は、筆者がデータをさかのぼることのできる2003年以降では最高だった。米国がベネズエラやシリアから原油を輸入しなくなったことなどが背景にある。
それでも、ロシアからの昨年の原油輸入額(47億1000万ドル=現在のレートで約5410億円)自体は、10年前に比べると45%も縮んでいる。また、割合ではなく額そのものは、米国の原油輸入額が史上最大だった2008年以降で5番めにとどまる。
同年以降、米国では全体の原油輸入額が約62%減っている。水圧破砕技術を用いたシェールオイルの開発が進み、国内生産が飛躍的に増えたからだ。その結果、最近まで価格も抑えられていた。一方、米国の原油輸出額はこの間に約3000%伸びている。
前にも書いたように、ロシアからの輸入に関して問題となるのは、原油よりもむしろガソリンだろう。米国の昨年のガソリンやその他の燃料の国別輸入額では、ロシアからが21%と最大となっているからだ。
いずれにせよ、米国が原油の輸入に関しては競合国や敵対国などに頼らずにすむようになっているという点は、いまの危機でひとつの安心材料かもしれない。
米国の原油輸出額は2003年には原油輸出額のわずか0.16%にすぎなかったが、昨年は約52%に達している。