経済・社会

2022.03.03 10:00

途上国を危機から救う。気候変動との闘いにおける貿易のあり方とは

Maizurah Ariff / EyeEm / Getty Images


環境貿易に関する交渉への参加


危機的状況において特に重要なのは、貿易に影響を与える政策の透明性および予測可能性です。食料や医薬品などの必需品の不足にすぐに対応するためには、輸入品はなくてはならないもの。そのため貿易施策は、危機対応を支えるものでありこそすれ、それを妨げるものであってはならないのです。
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サプライチェーン全体でのサステナビリティへの関心は各国や企業の間で高まりつつあるものの、多くの国では、炭素集約度の高い商品の関税が、より「クリーン」な商品よりも低く設定されていることが多いのが現状です。

よりクリーンなサプライチェーンを構築し、炭素排出量を削減するためには、このような炭素消費量の多い商品の輸入を優遇する現在の制度を改めることです。適切な環境政策が施行されれば、カーボンフットプリントの少ない地域への生産拠点の移転を、貿易が後押しするでしょう。それは各地域の競争力向上につながり、サプライチェーン全体でより環境に優しいソリューションの導入も進むと考えられます。

世界が低炭素成長へと移行すれば、開発途上国には新たな経済的チャンスがもたらされます。なぜなら、開発途上国で作られる製品は基本的によりクリーンであり、Environmentally Preferable Products(環境配慮型製品、EPP)を生産する上で有利な立場にあるためです。依然関税の高いEPP、特に農産物の貿易の自由化は、開発途上国や後発開発途上国にとって計り知れないチャンスとなります。
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成長のチャンスのもう一つの鍵は、カーボントレースのための適切なインフラ構築です。関連データが乏しく、デジタル化が進んでいない開発途上国にとって、現状のままではカーボンフットプリントの計算には複雑な作業が必要となるためです。

開発途上国がこのようなチャンスを活かすには、自ら多国間貿易交渉のテーブルにつき、そこでEPPの関税についてだけでなく、ソーラーパネルのような特定の環境目的を持つ環境商品についても交渉を行うことが不可欠です。

また、これらの商品に影響を与える関税以外の障壁や、環境サービスやその他の気候変動対応型商品の貿易規制に関する議論にも参加しなければなりません。環境貿易のルール作りに貢献することで、自らの利益を確保することができるのです。
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文=Mari Elka Pangestu, Managing Director, Development Policy and Partnerships, World Bank Group

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