ビジネス

2022.02.24

多言語チャットボットで自治体や観光業をDX

2021年10月下旬、経産省が推進するスタートアップ育成支援プログラム「J-Startup」に採択された50社のなかに、その名前はあった。Bespoke(ビースポーク)。15言語に対応するチャットボット「Bebot」をはじめ、AI技術を駆使して自治体や観光業のDXを手がけるスタートアップだ。

組織を率いるのは綱川明美。観光地の穴場スポット情報を簡単に得られるサービスをつくろうと、金融機関を辞めて15年に起業した。以来、世界中から採用した技術者と独自のAIチャットボット技術を開発し、ホテルのフロントや空港の案内カウンター業務を自動化。取引先には成田空港や東京駅、海外の国際空港など名だたる機関が並ぶ。

20年からはコロナ禍で非接触コミュニケーションツールの需要が爆発し、事業の軸足を自治体向けのDX推進に移した。綱川の元には日々、日本全国の自治体から市民サービスの自動化・多言語化や、役所の業務効率化の相談がもち込まれているという。チャットボットを手がける企業はほかにもあるが、なぜ綱川に相談が集中するのか。

「常に新しいことを仕掛けているからだと思います。例えば、特定の観光スポットに人が集中しそうだとわかれば、自動的にほかの観光スポットを紹介して混雑を緩和するといったロジックをチャットボットに組み込んでいます。データを基に人の流れを変えられるのは大きな強みのひとつです」

起業家としての自身の強みは「何でもやるところ」。起業当初は、SNSで約700人いる友達全員に個別メッセージを送り仲間を募った。サービスの利用者数を増やしたい一心で、ターミナル駅前でスーツケースを持った人に登録を求め声をかけ続けたこともある。

「初めは仲間とアートを作っている感覚でしたが、お客さんの声に応えるうちに社会的な意義のある仕事になってきました。テロや災害にも対応できる多言語チャットボットで情報格差をなくし、安心・安全な社会をつくっていきたい」。


つながわ・あけみ◎ビースポーク代表取締役。UCLA卒業後、豪系投資銀行の日本オフィスで機関投資家向け日本株のリサーチ・セールスやトレーディング、日系金融機関の海外進出コンサルティング業務などを担当。フィデリティ・インターナショナルで機関投資家向け金融商品の開発を経て、2015年から現職。

文=瀬戸久美子 写真=帆足宗洋(AVGVST)

この記事は 「Forbes JAPAN No.089 2022年1月号(2021/11/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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