「短命県」青森、汚名返上のカギ握るのは縄文文化?

のっけ丼(Photo by Pudeekao/shutterstock.com)

青森県は、都道府県別の平均寿命ランキングで常にほぼ最下位をキープし、日本一の「短命県」として知られています。

九州出身で、現在フランスに住む僕とはまるで接点がなくても、この話題は耳にしたことがあり、気になる問題でした。周囲の人からは、その原因として、漬物文化と「朝ラー」と呼ばれる朝からラーメンを食べる文化があるからだと聞いていましたが、どうも腑に落ちずにいました。

青森に適したレシピとは


2020年12月、青森県は県民サービスの向上と地域の一層の活性化を目的に、アクサ生命保険と包括連携協定を締結しました。僕はアクサ生命のつながりで、健康づくりセミナーに携わっています。

セミナーでは、青森県が推進する「だし活」「だす活」の普及啓発を図るために、出汁の重要性や旨味(umami)の意味、なぜ舌は五味を感じることができ、なぜ人間には五感が備わっているかなどを説明しています。また、青森に寄り添ったレシピとして、気候風土、文化、歴史に配慮し、地元の食材を使った“手抜きレシピ”の提案も行ってます。

健康や食生活に関しては、正論を振りかざしても、「言われなくても分かっている」となるし、料理もレシピが難しければ一度作ってみるぐらいで習慣化にはできません。そこで今回は、「時短で美味しい味」ではなく、「手間がかからず優しい味」を目指しました。

事前に聞き込み調査をしたところ、1日の料理に費やされる時間は、朝は5〜10分、昼は15〜30分、夜は30分〜1時間。そこで、負担にならない5分程度で準備ができ、保存が効き、翌日の方が美味しい、旨味とカリウムを多く含む健康的なレシピを考えました。

レシピ開発においては、美味しさや栄養素ももちろん大事ですが、作り手や食べ手の習慣への配慮が欠かせません。青森といえば、冬になれば、雪掻きを日常的に強いられる豪雪地域。他の地域の人にはわからない、目に見えない辛さが存在します。雪掻きは、体力的にはもちろん、精神的にも疲弊する重労働。また、料理に費やす時間を奪いかねず、手軽に温まれるようにインスタントラーメンを手にするのもわかります(青森県はインスタントラーメン消費が日本一です)。


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ねぶた祭りには「名物の食」がない?


今年1月、僕は大雪に見舞われている青森県を訪問し、青森商工会議所の運営するAOMORI STARTUP CENTERでセミナーに登壇。あわせて、青森市文化観光交流施設「ねぶたの家 ワ・ラッセ」、世界遺産に選ばれた「北海道・北東北の縄文遺跡群」三内丸山遺跡を訪問しました。

ねぶた祭りは、毎年200万人の動員数を誇る、東北の三大祭りの一つ。人々の心を繋ぐ祭りとして栄えてきていますが、狂喜乱舞する人々の姿は、まるで冬の我慢の鬱憤を払っているかのように見えました。かつて、冬を乗り越えるのは、今よりずっと過酷なものだったのでしょう。



そこでふと、僕が住むニースを代表するカーニバルを思い起こしました。今となっては宗教色のない祭りですが、それはかつて、「復活祭」とされるイースターに向け、断食と苦行が義務となる「四旬節」の前に、肉を食べて遊び楽しむイベントでした。
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文=松嶋啓介

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