小山薫堂 x 高野真スペシャル対談 ワインの開け時

放送作家・脚本家の小山薫堂が経営する会員制ビストロ「blank」に、『Forbes JAPAN』Founderであり、「blank」のもうひとりのオーナーでもある高野真が訪れました。スペシャル対談第2回(後編)。


高野 真(以下、高野):薫堂さんを紹介してくれたのは、元ゴールドマン・サックスの社長で、僕の上司でもあった山崎養世さんでしたね。

小山薫堂(以下、小山):2005年ですね。

高野:初めて会った日、僕が「軽井沢で別荘を探しているんです」と言うと、薫堂さんが「僕の知人がキャンセルした敷地が空いています」とおっしゃって。後日、自分がいいなと思った場所がまさにそこで、驚きました。そもそも、僕が別荘をもつに至ったきっかけは山崎さんで、山崎さんがご自分の別荘を僕に何回も使わせてくれた。それで軽井沢に魅了されたんです。

小山:僕が軽井沢に通うようになったきっかけは2000年に東京・西麻布から移転した「エルミタージュ ドゥ タムラ」というフレンチレストランでした。軽井沢は食も含めて文化度が高いですよね。あとは気がいい。アメリカのセドナのように邪気を吸ってくれて、デトックスできるというか。高野さんはどこに魅了されたのですか?

高野:気がいいし、よく眠れる。あと、同時期に来ている人を「今夜のBBQに来ませんか」「明日のゴルフ、ご一緒しませんか?」と気軽に誘い合える関係性かな。それこそソニーの(元社長)出井(伸之)さんに「明日どう?」なんて誘われるわけですから。ビジネスのしがらみや利害なしに会える、こぢんまりしたコミュニティというのがとても心地よいです。

小山:1年のうち、どれくらい通われていますか?

高野:夏はほとんど住んでいます(笑)。それ以外は月に1、2回で、1回につき1週間は滞在しています。

小山:最近、どこかよいレストランは行きましたか?

高野:いえ。僕は軽井沢では外食をあまりしないんです。デリシアというスーパーで買い物をして、ひとりでつくって、テラスで食べちゃう。軽井沢って野菜がとてもおいしいですよね。夏のキャベツとか、ひと玉食べれちゃう。

小山:新鮮で、味が濃くて、しかも安い。確かに自分でつくって食べるのが、軽井沢のいちばん素敵な過ごし方かもしれません。

与えた側の喜び


小山:高野さんがすごいなと思うのは、あまり独占欲がないことなんです。最近つくったバー併設のゴルフ練習場も長野ナンバーのTOYOTA車も、「自由に使ってください」とよく言われますよね?

高野:いや、さすがに信頼している人にしか言いませんよ(笑)。でもそう考えると、山崎さんが別荘を自由に使わせてくれたことは影響しています。自分でつくったものやもっているものは使わないと意味がない。だから誰かに使ってほしい。ただし、その「誰か」は、重要だというか。

小山:この『Forbes JAPAN』で以前連載していた「妄想浪費」を単行本化したのですが、そのあとがきを考えていたとき、青森の「わいんぱぶ ためのぶ」の店主の言葉にすべては帰結するなと思ったんです。店主に日々の幸せは何かと尋ねると「孫に小遣いをあげるとき」と言う。「与えられた人はもらったときにすごく喜ぶけれど、その喜びは早く消える。でも、与えた側の喜びはずっと残るんだ」と。

高野:いいお話ですね。
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文=小山薫堂 写真=金 洋秀

この記事は 「Forbes JAPAN No.089 2022年1月号(2021/11/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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