小山:それで高野さんが以前、軽井沢でBBQに呼んでくれたときのことを思い出したんです。ほら、ある女性が高野さんの別荘のセラーから、ロマネ・コンティに最も近いといわれる1986年の「DRC ラ・ターシュ」を、しかも栓を抜いた状態で持ってきて……。
高野:菊間(千乃)さんね(笑)。元フジテレビのアナウンサーで、いまは弁護士だけど、日本ソムリエ協会認定ワインエキスパートでもあるからね。
小山:サイトで検索したら1本100万円!みんな大喜びでしたよね。それで、高野さんが「DRCはもうダメだよ」と念押ししたからか、菊間さんは次にシャトー・マルゴーを持ってきて、それも数十万円のもので。さすがに大丈夫かなと心配していたのですが、数日後に高野さんと打ち合わせしたとき、「いや、みんなひどいよなー」と言いながらとってもうれしそうだったのが、印象的だったんです。飲ませてもらえた僕たちは翌日には忘れてしまうけど、高野さんはうれしさが続いているんだなって。
高野:(笑)。でも実際においしかったでしょ? そこがポイント。開け時をわかっている専門家が開けたからおいしく、友人たちも喜んでくれた。あれは僕にとって、最上のタイミングだったと思いますね。
今月の一皿
麻布「十番右京」の名物料理「トリュフたまごかけご飯」。食べる直前にスライスするため、芳醇な香りを楽しめる。
blank
都内某所、50人限定の会員制ビストロ「blank」。筆者にとっては「緩いジェントルマンズクラブ」のような、気が置けない仲間と集まる秘密基地。
小山薫堂◎1964年、熊本県生まれ。京都芸術大学副学長。放送作家・脚本家として『世界遺産』『料理の鉄人』『おくりびと』などを手がける。熊本県や京都市など地方創生の企画にも携わり、2025年大阪・関西万博ではテーマ事業プロデューサーを務める。
高野 真◎1961年、埼玉県生まれ。2001年よりピムコジャパンリミテッド取締役社長。14年、金融から出版に転じ、アトミックスメディア(現リンクタイズ)の代表取締役CEO兼『Forbes JAPAN』編集長に就任。19年よりリンクタイズ代表取締役CEO。