「すまきゅーさんって縫い物できたよね?」
「きっかけは、たまたま飲み会に顔を出したときに、同席した女の子宛にかかってきた1本の電話だった。女の子はしばらく話した後、『すまきゅーさんって縫い物できたよね?』と聞いてきた。電話の相手は芸能関係のスタイリストで、急きょ縫物ができる人を探しているという。(中略)
現在では、芸能関係が2割、コスプレ公式(ゲームショーなどのブースのコンパニオンが着る企業公認のコスチュームなど)が4割、一般の人からの依頼が4割、の割合で仕事が来ている。」
本書によれば、順調に仕事量も増えてきているすまきゅーさんだが、そんな今も、時間を作っては派遣型のアルバイトで様々な現場に足を運んでいるらしい。と「ん?仕事は順調なのでは?」と首を傾げたくなる一節だが、その後続く、
「私は仕事と遊びの区別がないんですよね。毎日遊んで暮らしてるけど、毎日仕事してるっていう感じなんです。……(後略)」
という言葉を聞いて、合点がいったような気がする。
本書が紹介する、様々な「非会社員」が成功(成立)する最大の要因は、「真剣」であることのようだ。それが「遊び」であれ「仕事」であれ、常に真剣に向き合うことこそが成功の秘訣なのかもしれない。
さらに本書は、スーパーで働きながらすし屋を経営するすし職人や、元傭兵の軍事アナリストや、板金塗装業を営むモデルであり溶接ギャルを自称する現役ギャル社長など、多彩な「非会社員」を紹介している。
『「非会社員」の知られざる稼ぎ方』(光文社新書)は、「認められる」とか「地位を向上させる」とかいう眉唾ものの処世術指南書ではない、「いかに暮らしを充実させるか」を稼ぐことから教える人生読本だった。
閉塞観漂うウィズコロナ社会に、暗澹とした思いを抱いたまま送り出されようとしている若者たちに、是非一読をお勧めしたい一冊だ。
(この記事は、村田らむ著『「非会社員」の知られざる稼ぎ方』から編集・引用したものです)
『「非会社員」の知られざる稼ぎ方』(村田らむ著、光文社新書)