キャリア・教育

2022.04.14 08:30

雇われないが「事業主」とも違う。新しい成功法「非会社員」とは

Shutterstock



特殊清掃会社「まごのて」佐々木久史さん
-->
advertisement

「元手は60万円くらいしかなくて、心もとなかったけど、とにかくやるしかなかった。知り合いの運送会社の社長のところに間借りして、電話回線だけを引いて1人で会社を始めた」

実車を持たない貨物運送取扱事業(自社以外の運送業者の運送機関を使い貨物運送を引き受ける事業)だったため、リスクは少なかった。前の職場で運送屋とはたくさんつながりができていたので、比較的早く軌道に乗り、1年目で売り上げは3億円になった。(中略)

そして3年目に、実運送(実際にトラックを持つ運送業)を始めた。しかしそれが失敗の始まりだった。(中略)
advertisement

『その頃にはトラックを60台以上持つ、そこそこ大きい企業になっていた。行くも地獄、やめるも地獄だった。結局、倒産するしか道がなくなってしまった』

2008年に会社をたたんだ翌年、逃げるように、東京にやってきた。東京の片隅で、ゴミ屋敷清掃の基になる仕事、便利屋、なんでも屋、を始めた。」

と、本書の冒頭を飾るFile.1は特殊清掃会社「まごのて」を経営する佐々木久史さんの半生の顛末だ。

特殊清掃とは、世に言うゴミ屋敷の清掃を意味する。TVのワイドショーやバラエティ番組などでも盛んに紹介される、とても人が暮らしているとは思えない、うず高くゴミが積み上がった屋敷や部屋を奇麗にするのが仕事である。中には、数十匹の猫の糞尿が床に大量に積もっていたり、オシッコの入ったペットボトルが数千本も出てくるような部屋もあるらしい。

「体ひとつ以外に何もないから、便利屋以外に選択肢がなかった。理想も理念もなかったよ。」

と語る佐々木氏だが、当初は自宅マンションのベランダで始めた事業も軌道に乗り、今では社屋も新たにし、さらに自社ビルを持つことを目標としている。


Getty Images

「コスチューム制作者」という生き方


「高校を卒業したら、北海道を離れ東京に行こうと決めていた。北海道内なら札幌が都会だが、実家から札幌は自動車で6時間もかかる距離にあり、何があるかほとんど知らない札幌よりも、テレビで慣れ親しんだ東京のほうが、心の距離が近かった。」

本書のFile.3は、唯一無二のコスチュームを制作する「CHOCOLATE CHIWAWA」のすまきゅーさん。

北海道十勝出身のすまきゅーさんは、毎日学校から一目散に帰宅し、読書とTVを楽しんでいた。そして上京後、美術と服飾の専門学校で迷うが、職業として成り立つ可能性が高いという理由で服飾の道を選ぶ。

「テレビをつければアイドルたちが華やかな衣装をまとい歌を歌っている。イベント会場に出掛ければコンパニオンたちが、催し物にちなんだコスチュームを着て笑顔を振りまく。近年ではハロウィーンパーティーなどコスプレ文化が盛んで、趣味でさまざまな衣装を着る人も増えた。」

今やコスプレは日本発祥の文化として、漫画やアニメとともに世界中に伝播し支持され、商品としてのみならず、イベントやショーなどとパッケージして商品化される、確固たる輸出品の一つである。かつて、訳知り顔の大人たちが苦笑いする隙間に生まれた若者文化は、あっという間に日本の文化産業を世界市場へと牽引する一大ムーブメントとなっている。
次ページ > 「すまきゅーさんって縫い物できたよね?」

文/森健次

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事