ビジネス

2022.02.25 08:00

立ち上げ2カ月で400社以上が参加。「動画就活」がメンストリームの時代へ


一次面接が動画になる時代に


就活は、紙の履歴書と分厚い企業情報というアナログな時代から、ネットサービスの普及によって一定の効率化は進んだ。しかし、学生と企業の間に広がる労力と手応え(成果)のギャップは続いている。企業側は、今までも会社説明会などで積極的に動画の活用を行なってきた。コロナ禍の影響にもより面談などはオンライン化も進んでいるが、必要に迫られた「一部の過程」のオンライン化にとどまっている現状がある。

一方、学生は、労力を費やして作成するエントリーシートの壁がある。「エントリーシートを好きで書きたい学生はいないと思っています。私自身も学生時代、企業検索をする時にエントリーシート不要のチェックボックスは必ずつけていた」(中根)。そんな学生たちが、書類を、記号のような文字よりも“自己PR動画”に切り替えることで、スピード感と生身の声をもって、チャレンジできるようになる。

しかし、動画という新しい自己プレゼン手法だけに課題も見えてきた。

デジタルネイティブであるZ世代は、友達同士でやり取りする動画を撮ることには慣れていても、オフィシャルなPR動画を作成することにハードルがあった。それは数字にも表れ、現在、学生のJOBTV登録者のうち動画を投稿しているのは10%ほどとまだまだ少ない。テキストベースのものを下敷きにしてPR動画を作成すると、見る側には冗長に映ったり、プレゼンの結論が見えにくくなるなど動画作成には違う文法が求められるからだと中根は言う。

レクチャーの様子
JOBTVでは学生向けに自己PR動画の撮影指導を行なっている。取材当日も多くの学生が参加。レクチャー後には実際に撮影し、アップロードまで行った。

「このサービスを立ち上げて就職活動はオンラインと動画で完結できると考えていましたが、撮影のサポートをしなければ離脱する人も多いことがわかってきた。企業、就活生が直感的に出会えるエントリー導線をまず第一に考えてきましたが、その前提ともいえる動画を手軽にアップしやすくするUXの整備はまだまだ足りていませんでした。サポート面ではオフラインで直接指導するなど、泥臭くやっていくのが今後の取り組みになっていくでしょう」

いっぽうで10%の積極層の動画の完成度はとても高いそうだ。このリテラシーのギャップを埋めることが課題だと中根は言う。学生をサポートする大学の就職課なども動画作成のノウハウを持っていないため、同社には撮影会やレクチャーイベントの依頼が増えてきており、ベンチャーや地方の中小企業からは動画アドバイザーとしての役割も求められている。

JOBTV中根
JOBTV中根えりか/急成長しているからこそ課題も見つかる。その改善は同時に可能性の広がりにもつながるという。

現在、企業から持ち込まれる相談件数は1カ月で150ほど。「企業は一次面接に動画提出を求めるのが今後トレンドになる」と中根は言う。また、企業側も就職希望者に見つけてもらうためのPR動画は採用広報ツールとして重要性が増す。

今後は新卒領域だけでなく分厚いとされる中途採用へも広げる予定だという。帝国データバンクの調査によれば2021年12月時点で約1万社企業の47.5%が正社員が不足と回答。企業も個人も動画発信時代の本幕がいよいよ上がる。

文=本田賢一朗 写真=Forbes JAPAN(人物)

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