企業はあらゆるステークホルダーに対して、10年後、20年後という中期ではなく、世紀を超えても成長あるいは存在し続けられるのかという問いに応えることで、それが自社の存在意義を明確にすることになり、発展を促すのだ。
「サステナブルであることで儲かるのか、そもそも本当に必要なのかという懐疑的な意識をもつ企業はもはや少ない」と平瀬は言う。「女性活躍などわかりやすい指標で、多様性を担保すると、例えば商品開発力などをしなやかに強くできて、利益に直結する。DEI(Diversity,Equity,Inclusion)が持続的なキャッシュフローを生むのはもはや常識という認識です」
Purpose Beyond Profit
総合ランキング1位のセイコーエプソンを実際に取材してみると、小川恭範社長が話す言葉とAIの算出結果が一致していることがわかる。
まず、長期視点と視野の拡大。前述したように創業時から諏訪湖や地域社会をステークホルダーとして位置づけていることや、1988年にオゾン層破壊への懸念から全社フロンレスを実行した歴史がある。
さらにそうした取り組みを動かすために、社長が「社会貢献と従業員の幸せは両立する」と宣言。社内外に理念を行き渡らせ、ステークホルダーを巻き込んでいる。
こうした組織運営がアイデアを生み続け、既存製品の向上、環境関連製品など、製造業の概念を進化させている。平瀬は「Purpose Beyond Profit」がキーワードだという。
「利益よりも存在意義という意味です。ビヨンドではなく〈and〉でもよい。企業の存在意義と利益は相乗関係にあります。セイコーエプソンのように、社会貢献と従業員の幸せはイコールの関係です。この基本的な考え方が私の接する金融業界や、事業会社にも広がっています」
サステナブル・ラボでは、企業のサステナブルな取り組みが将来の業績と株価にどう関係するかという研究も進めている。企業価値がさらに「正しく」評価される仕組みに期待したい。
平瀬錬司◎サステナブル・ラボ代表取締役CEO。大阪大学理学部卒業。在学中から環境、農業、福祉などサステナブル領域のベンチャービジネスに環境エンジニアとして携わる。2019年にサステナブル・ラボを設立。大学との共同研究にも注力。京都大学ESG研究会講師。