ピーター・ティールが極秘出資する「サイバー戦争」支援企業

ピーター・ティール(Photo by John Lamparski/Getty Images)

米国のFBI(連邦捜査局)は、かつてイスラエルの「NSOグループ」が開発したハッキングツールを捜査に利用していたが、米商務省は昨年11月、NSOが悪質なサイバー活動に加担しているとして、同社をブラックリストに指定した。

ニューヨーク・タイムズ(NYT)は先週、その経緯を詳細に伝える長文のレポートを掲載したが、その記事でNSOのライバルとなり得る米国のスタートアップとして紹介されたのが、2017年にサンディエゴで設立された「Boldend(ボールドエンド)」と呼ばれる企業だ。

米国政府を唯一のクライアントとするBoldendは、これまで自社の存在をほぼ秘密にしてきたが、関係筋によると、その理由は、同社がサイバー戦争の任務を支援する自動化ツールを作成しているからだという。

NYTが入手した資料によると、Boldendはメッセージアプリのワッツアップをハッキングするツールを開発し、米国の防衛大手のレイセオンにプレゼンを行っていた。そのツールは、ワッツアップのアップデートで既に無効化されているが、Boldendは2020年にレイセオンと提携を結び、「安全保障における重要な作戦のための自動化プロダクト」を開発すると述べていた。

Boldendに関しては、他にも人々の関心を引く事実が明らかになった。同社は、ピーター・ティールの投資会社のFounders Fundの支援を受けている。この事実は、これまで公にされてこなかったが、事情に詳しい2人の関係者がフォーブスの取材に、Boldendが確かにティールの会社から資金提供を受けていたことを認め、事業のごく初期に1000万ドル以上を投入されたと述べた。

これは、かなり皮肉なことに思えるかもしれない。フェイスブックの最も著名な資金提供者であるティールが、フェイスブック傘下のワッツアップをハッキングする企業を支援しているからだ。

ただし、ティールは常識破りの投資家として知られ、Founders Fundは、フェイスブックから人々の顔データを吸い出し、警察のために巨大なデータベースを構築する顔認識テクノロジー企業「Clearview AI」にも出資している。
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編集=上田裕資

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